・・・僕はその頃、四角い箱の中に一人でした。
四角い箱の中には僕くらいの子ども達がたくさんいたけど、
僕はその頃、四角い箱の中に一人でした。
いつからそうなったか、どうしてそうなったかわからないけど。
四角い箱の中で僕が一人だということは、
もうすっかり、「そういうもの」になってしまっていて
箱の中のみんなは「そういうもの」がすっかりあたりまえみたいで
僕はただ、四角い箱の中に一人だったのでした。
そんなある日、僕の知らない街から新しい子どもが一人
僕のいる四角い箱の中に入ってきました。
僕はどきどきしました。
その子はこの四角い箱の中に初めてやってくるのです。
僕がここで一人なことは、その子の中では、
まだ「そういうもの」じゃないのです。
そのことに気がついて、僕はとてもどきどきしたのでした。
どうにかして僕はそのこと友達になりたいと思いました。
だけど僕は箱の中でずっと一人だったので
その子にどう話しかけて良いか分かりませんでした。
僕は焦りました。
早くしないと、きっと、その子にとっても、僕はすぐ
「そういうもの」になってしまうと思ったのです。
だけどそれでも僕は、どうしても話しかけることはできませんでした。
困った僕は、その子に笑いかけることにしました。
仲良くなりたいことだけは伝えたかったのです。
僕は、その子と目が合う度、一生懸命笑いかけるようになりました。
その子も僕が笑いかけてることには気づいてくれているようでした。
僕は期待しました。
その子はまだ、新しい四角い箱の中に溶けきっていないようだったから、
僕を「そういうもの」だって見ないで僕と話してくれるかもしれない。
そんな風に、僕は期待したのでした。
そんな風に日々が少し経って。
ある時、その子が僕の方にやってきました。
意を決したような様子で、僕の方に歩いてきます。
僕はものすごくどきどきしました。
話しかけてくれたら何てこたえようかって、
そればかり頭をぐるぐるします。
どきどきして、何か言いたそうなその子が口を開くのを待ちました。
その子は僕にこう言いました。
「私の顔が変なのはわかるけど見る度に笑うのはやめて」
その一言だけで、その子は振り向いて行ってしまいました
僕は最初きょとんとしていたと思います。
その子の顔が変だなんて、僕は一度も感じたことはなかったから。
それにその頃、僕はみんなに醜いと言われていて。
だから僕は自分が世界で一番醜いと思っていて。
自分が誰かを醜いと笑ってるようにも見えたなんて、
考えることもできなかったのです。
僕は最初そうやって呆然として、ちょっと経って事態が飲み込めて
悲しくて悲しくて僕はぼろぼろと泣きました。
それはみんなに醜いと言われることよりもずっとずっと悲しくて。
悲しくて悲しくて僕はぼろぼろと泣きました。
そうやってぼろぼろと泣くうちに
僕はふと、世界で自分が一番醜いと思っているのは
僕だけでは無かったことに気がつきました。
そのことに気がついても悲しい気持ちは相変わらずだったけど
悲しみがほんの少し、変わったものになりました
その後も僕は相変わらず四角い箱の中で一人だったし、
相変わらず自分は醜いと思っていたけど
世界で一番醜いとは思わなくなりました
その後も僕は相変わらず四角い箱の中で一人だったし、
相変わらず自分は醜いと思っていたけど
世界で一番醜いとは思わなくなりました・・・
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