このホームページの2000年・新春用の表紙絵に、後ろ姿の着物の女性の絵を描いていたとき、ふと、高校時代に観たある後ろ姿の女性の絵を思い出した。
その絵を描いたのは、服飾系の仕事をしている母の仕事関係の知人の方。
もともとはデザイン画を描かれていた方だったけど、服飾関係のお仕事のかたわら、女性の絵をいろいろ描くようになり、今度小さな個展を開いた・・・という話を当時母から聞いた。その頃の私は特にまだ絵は描いていなかったけれど、ちょっと興味があったので母と一緒に見に行ったのだった。
絵は殆どがいろいろな服装やポーズの女性の全身像。
女性を浮き立たせるように効果的に取られた余白。
色は絵全体に塗り込まれてはいない。
流れのある線のように、女性の輪郭の一部のように着色された水彩系の色。
期待以上に私好みの絵達だったけれど、そのなかでも特に、浴衣の女性の後ろ姿の絵に一番惹かれたことを覚えている。
少しだけ躰を傾かせて立っている女性の体の線がとても色っぽかったこともあるんだけれど、絵全体が余韻たっぷりに想像力を刺激してくれる一枚。
人物画に余白のあることが、描きかけの絵みたいにしか見えないか、描き込まれていない状況を想像させてくれる余韻になるかは、結構微妙なところだと思うけれど、その絵の余白は、少なくとも私にとっては後者のものだった。
どんな女性の、どんなときの絵なんだろうなって、眺めて想像しながらお茶を飲んでいるだけで、午後の一時を過ごせそうな、そんな絵。
・・・その一枚はほんとにかなり気に入ったので、上記したようなことを、その絵を描いた方にも伝えた覚えがある。当時高校生だったのもあり、生意気かなあと思いつつ感想を述べると、
「そう、そうなんだよね!」
と我が意を得たという感じの笑顔で話しかけてきてくれた。
その時に話ししてくれたのは、地元で「先生」と呼ばれる種類の人が、この個展を見に来てくれたとき、
「先生は本格的な絵は描かれないんですか」
と訊かれて、苦笑するしかなかった、ということだった。
そう訊いた「先生」が「本格的」と考える「絵画」はどんなものかなんとなく想像がつくし、そういう絵の方が「好み」だという人を勿論否定なんかしない。
でもやっぱり、どうみても一つのスタイルで描いている人に「本格的」はないよなあ、と思う。当時も思ったけど、自分でもささやかな趣味ながら絵を描くようになってよりそう思う。
好みや巧拙はあっても、「本格的」かどうかなんて。
そんな基準、いらないよね。絵を楽しむのに。