aiko's Another World Creation&Expression

春の絵

川沿いにかなりの距離をずっとずっと桜が咲いています。
川の両岸のどちらにも桜があるので、空が桜の天井の向こうになります。
今日の空は晴れやかで、春らしい色素の薄い水色の空です。
桜はいっぱいの花の重さに耐えるように、川に向かって枝垂れています。
川面に映る枝垂れ桜は、水ブラシで滲ませた絵のようです。
鯉がときどき水面の桜に向かって泳いでいきます。
水面の桜は揺らめいて壊れていきます。
まだ乾かない水彩画を幼児の指が襲ったかのように。
いたずらな指がいってしまうと揺らめきは少しずつ小さくなって
またもとの水彩画に戻っていきます。

川面の桜が壊れたり静かな絵に戻ったりするのにはお構いなしに
川面に降りてきた花弁達は桜の上を流れていきます。
川面と桜の間には菜の花が咲いています。細くて背の高い野生の菜の花です。
畑の菜の花よりずっとほっそりとしているのは桜の影にいるからでしょうか。
葉や茎の緑も花の黄色も桜の薄紅に申し合わせたように色素が薄い。

そんな何もかもが淡い色彩の中で、私は黒い服で立っています。
花見客達も陣取らない、野の花いっぱいのきつい傾斜の川岸で。
色相も彩度も明度も何もない、黒い色の服を着て立っています。

一人黒い色で立つ私は、賑わう花見客や立ち並ぶ屋台のようには
川沿いの春という絵の中に溶けきっていないだろうなんて、
このどこまでもうららかな春の絵の中に溶け込んでしまったら、
淡い色たちはこんなにも鮮烈に私に迫ってはこないだろうなんて、
妙な考えが頭に浮かんできた頃、勉強に戻ろうと川岸を去りました。

今日の私の目に映り、今日の私の中にある春の絵は、私のいない春の絵。

私が春の絵に溶ける日には、どんな絵が私の中に映るのでしょう・・・。

 


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