aiko's Another World Creation&Expression

アングル
 チューリップと薔薇は、意外と似ている。

 どこが?って思われるかもしれないが、どこからどう見てもそっくりというわけでは勿論ない。似てるな、と思うにはちょっとした条件がある。

 まだ開ききってなくて雌蘂や雄蘂の見えないチューリップを真上から見たか、開いたチューリップでも、雌蘂や雄蘂がぎりぎり見えないくらいの斜め上から見たときには、チューリップと薔薇は確かに似ているのだ。花弁の色の鮮やかさと重なり合い具合。チューリップは素朴なイメージのある花だけど、それはチューリップがいつも横から眺められる花だからだと思う。

 チューリップで思い浮かぶイメージ。さきっぽがちょっとだけギザギザした壺のような花にまっすぐ伸びた茎と葉。それがお行儀よく花壇一面に並んでいる。素朴な光景。でもそれは、チューリップを横からだけしか見ていない。

 ほんの少しだけ角度を変えて眺めてみると、横から見たときのさきっぽのギザギザは実は複雑な花弁の折り重なりでできているのがわかる。複雑な折り重なりだから、一口に上から眺めると言っても、どれくらいの位置から眺めるのかで見え方は様々に変化する。そのなかには、チューリップが薔薇に似てる角度だって確かにある。この発見は、いつもよく行く喫茶店へなんとなくいつもと違うルートで出かけたときのもの。いつもは通らない道の直ぐ側にあったチューリップ。何気なく上から眺めたら、薔薇が浮かんだ。

 そんな風に普段と違うアングルからチューリップを眺めていたら、ふとあることが頭に浮かんだ。プレステの大作RPG、FF8に出てくる「ライブラ」。プレイしたことがある人は分かると思うけど、キャラクターやモンスターのヒットポイントや状態を分析できる技である。このライブラをかけて相手を分析しているとき、3Dのキャラをぐるぐる回して、真上だろうが真下だろうがどんなアングルからでも見ることができる。

 ライブラのことを思い出したことで、発想が拡がった。博物図鑑や百科事典の中の花や動物の説明が、ライブラみたいになっていくとどうだろう。どんな角度からでも眺められて、拡大縮小も思いのままのリアルな3D映像。子供の頃、親指姫の目からはチューリップはどんな風に見えたんだろうなんて思ったけれど、そんな映像も一瞬で目の前に現れる。雌蘂の柱の元にある親指姫の視界。赤い壁に囲まれた天窓から覗く小さな小さな空・・・。もしほんの小さな頃から、実物を見る前に、どんな角度からでも眺められる3D映像でいろんな物を見て育ったら、物をイメージする時に自然に想像するアングルはどんなものになるのだろう。3Dのチューリップをぐるぐる回して、斜め上とか斜め下のアングルが気に入った子供が、花壇でお行儀よく並ぶチューリップを生まれてはじめてみたら。彼にはチューリップはどんな風にみえるのだろうか。そんな想像に耽りつつ、いつものお店へ向かった。

 珈琲を飲みながら電話帳のような択一問題集と格闘してから、お昼を食べに帰る。帰り道、もう一度道端のチューリップを見た。3D映像も好きだけど、チューリップと薔薇が似てるなんてことは、春の日のお散歩で突然気がつくべきものだと思った。文系人間の感傷かもしれないけど。


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