aiko's Another World Creation&Expression

王国の猫
僕は自由だという人が、かつて、いた
僕は、守られて、そして、自由だと

その人は王様だった
冠のない王様だった

王様の与える世界のなか、僕は傅かれてさえいた
王様は僕を守りたい・・・小さな王国の中だけで

王様には冠がなかったので自分が王様だと知らなかった
王様の見える世界のなか僕を飼おうとすることを
王様は僕は自由だと言った
冠のない王様は自分を王様だと知らなかったから

僕は王様には見えない世界を遊び歩き時に傷を負って
王様の元に帰りその度ごと王様は混乱する
王様の見える世界に僕はいるはずなのに
王様の与える世界で僕は守られるはずなのに
どうして僕は王様の知らないところで傷を負っているのか
王様に冠があれば、王様は僕にそう言ったことだろう

だけど、冠のない王様は、自分が王様だとは知らなかったので
小さな王国で僕を飼おうとしていることを認めることができなかった
だから、王様は、僕は自由だと無邪気に信じていたのだ
僕が王国の中だけで暮らすことができていれば
王様は王の欺瞞を知らない幸福な王様だったろう

でも僕は、僕に与える世界の意味も
僕に世界を与えようとしていることさえ
知らないで笑う王様を許せずに
王様の知らない世界で傷を作り
ただ僕を守りたいという王様の手を拒んだ

無邪気な王様に欺瞞の罪を見いださせる投げ遣りな快楽は
同時に僕の真皮まで傷つけるので、僕は毛皮を着なければならなかった
毛皮は傷口を通り皮膚の遥か下にまで僕に絡みついてきたので
いつしか僕は僕自身を猫だと思うようになっていたのだ

僕はその毛並みを王様に撫でられるたび
その毛皮を剥いでしまいたい衝動に駆られながら
僕自身の一部になりかけていた毛皮を自ら剥ぐ勇気もなく
ざらついた甘さの舌を持つ猫になりつつあった

・・・
でも僕がある日思い立ち王国から少し遠くまで出かけたある日
偶然にも僕はあなたに出会い、あなたは僕にただ教えた
毛皮の下の僕は人であることを
まだ猫にしか見えない僕をみて
それでもあなたは僕を人だといった
それでもなお絡みついたこの毛皮を剥ぎとれない僕を
あなたは時に叱り時に諭し時に宥めその目で僕に語る
王国を出てあなたの前でその毛皮を剥ぎ取れと

・・・・・・
でも、とうとうあなたが僕の毛皮を剥いでくれた
毛皮の下の僕はとても汚れて泥のようだったけど
それでもあなたは僕が人だと気づかせてくれた

人になったばかりの僕は
まだ時折、剥いだはずの毛皮を纏いそうになる
その度に、あなたの目は僕を諭す
そして僕はうつむいて毛皮を脱いで、あなたの前に裸体を晒し
自分が人であることを復唱する

僕は猫の舌を持つ人だと・・・


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