平成14年民法第一問
一 設問1(1)
1(1) 
 BがCに甲土地の返還を請求できるためにはA夫婦とCの売買契約の
効果がBに帰属しない事が必要である。売却代金をAの債務の弁済に
充てるために契約されている本問では、特別代理人の選任が必要な
利益相反行為(826)として、無権代理でありBに効果帰属しない
のではないか問題となる。
 (2)
 思うに、親権者は子の財産に関する法律行為について広範な法定
代理権を有する(824)
 とすれば、親権者と取り引きする第三者の取引安全のためには、
親権者の法定代理権を制  限する利益相反行為にあたるかどうか
は、形式的、外形的に判断できる必要がある。
 すなわち、行為を形式的、外形的に判断して親権者に一方的に利
益で子に不利益な行為が826の利益相反行為である。
 (3)
 この点、本問の子の土地の売却は、形式的外形的に判断して、親
権者に利益で子に不利益な行為ではない。
(4)
  よって、A夫婦の甲土地売却は826の利益相反行為にはあたらない。
2(1)
  しかし、本問では、A夫婦は、Aの借金の返済のためと言うAの利益
を図る目的で法定代理を行っている。
 親権者は、法定代理権を子の利益のために行使する必要があるとこ
ろ、かかる真意を秘して行ったA夫婦の意思表示は、93の心理留保に
類似する。  
 そこで、心理留保についての93条但書を類推適用して、意思表示の
相手方が親権者の真意に悪意有過失の場合は、意思表示は無効となる
と解する。
 (2)
 この点、本問では、相手方DはA夫婦の真意について悪意である。
 (3)
 よって、A夫婦の売却の意思表示は無効である(93但書類推)ので、
売買契約の効果もBに 帰属しない。
 従って、BはCに甲土地の返還を請求できる。
二 設問1(2)
1 
 前述の様に、売買契約は93条類推適用により無効であり、BC間に
はなんら契約関係が存しない。そこで、CがBに500万の支払いを請
求できるかについては、不当利得返還請求(70 3、704)がで
きるかが問題である。
2
 思うに、不当利得の成立要件は、@他人の労務又は財産による利得
の存在、A利得に対応する損失、B利得と損失に因果関係あること、
C法律上の原因がないことが必要である。
3  
 この点、本問では、A甲土地を返還したCには損失があるとは言え
るが、@500万円はAの債務の弁済にあてられているのであり、Bに
利得があるとはいえない。
4
 よって、CはBに不当利得として500万の支払い請求をすることはでき
ない。
三 設問2
1
  BD間にはなんら契約関係がないところ、BがDに500万円の支払いを
請求できるためには、D に不当利得が成立することが必要である。
2    
 この点、本問では、@DはBの土地である甲土地の売却代金で弁済を
受けており、利得がある。A500万は、Bの所有物の対価であり、Bは
本来受け取るべき金銭を受け取れなくなった損  失がある。Bこの
利得と損失は、A夫婦が有効な法定代理を行った後、気が変わったため
に生じたものであり、社会通念上、因果関係があると言える。
3   
 では、C法律上の原因があると言えるか。
 思うに、不当利得制度の趣旨は、形式的には正当視される財産の移
動が、実質的には不当とされる場合に、公平の観点から調整をなすこ
とにある。
 とすれば、債務者の所有にない他人の財産によって受けた債務の弁
済について、C法律上の原因がない、とされるのは、債権者が、債務
者の物でないことに悪意で弁済を受けた時とする のが不当利得制度
の趣旨にかなう。
 この点、本問のDは、500万円がBの土地の売却代金であることに
悪意であり、500万円 が債務者の物でないことに悪意で弁済を受
けたと言える。
4
 よって、BはDに対し、不当利得として500万円の返還を請求でき
る(704)
                                      
                            以上



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