平成14年商法第一問
一 不当な合併比率によりXがうける不利益について
 本問の合併比率はB社株3株に対してA社株1株であり、B社の株主は
合併が有効になされれば、従来B社の株式として有していた株式の1/3の
数のA社の株式を有することになる。 
 そして、本問ではA社とB社は株価の目安となる一株当たりの準資産額、
配当額がほぼ同じであり、株価もほぼ同じと解されるところ、合併が有
効になされると、B社の株主は、自己の有する株式の価値がほぼ1/3にな
るという著しい経済的不利益を受けることになる。
 以下、B社の株主Xがかかる不利益を回避するため、承認の前後を通じ
て採りうる手段につき 検討する。
二 合併契約承認前に採りうる手段
 Xは、合併契約書承認の株主総会に先だって、書面で合併に反対の意
思表示を通知し、かつ、株主総会で承認に反対することで、自己の株式
の買い取りをB社に請求できる(408条の3)。
  この買取請求権の行使により、Xは、承認決議がなければB社の株式が
有していたであろう公正な価額の支払いを受けて、自己の経済的不利益
を防ぐことができる。
三 合併契約承認後に採りうる手段
1 合併の無効を主張する手段
(1)
 合併が有効になされると経済的不利益を受ける株主Xとしては、合併無
効の訴え(415条)を提起して合併の無効を主張する手ことが考えられる。
かかるXの主張は認められるか。
 本問の合併に無効事由が存在するかが問題となる。
(2)
 思うに、合併をなすには@合併契約書の作成、A有効な株主総会の承認
決議が必要である(408-1)。
 そこで本問の株主総会の承認決議が無効であれば、合併には無効事由が
存在することになる。本問の株主総会決議は無効と言えるか。
 この点、本問では、議決権の70%を有する株主の議決権の行使により、B
社の株主に著しい経済的不利益を生じさせる、著しく不当な決議がなされ
ている。
 議決権の70%を有する株主が、特別利害関係人にあたる場合、本問の株主
総会には決議取消 事由が存在することになる(247-1-3)。
  この株主総会決議について、決議取消の訴えが提起され、その請求認容
判決が確定すると、株主総会決議は遡及的、対世的に無効となる。
 247条2項は判決の遡及効を否定する110条を準用していないこと、判決の
対世効についての109条を準用していることから、この様に解される。
  よって、本問の株主総会決議について決議取消の訴えが提起され、そ
の請求認容判決が確定した場合、本問株主総会決議は無効であり、合併に
は無効事由が存することになる。
(3) 
 従って、Xとしては、まず株主総会決議取消の訴え(247)を提起して請求
認容判決を得た上で、合併無効の訴え(415)を提起して合併の無効を主張す
る手段を採ることができる。
2 B社の取締役、監査役に損害賠償請求する手段
(1)
 では、合併が有効に行われてXが経済的不利益を受けた場合、Xはこの損害
についてB社の取締役、監査役の責任を追求して損害賠償請求する手段をと
れるか(266の3、280)。
(2)
 まず、266条の3は、会社の業務が取締役の職務執行に依存しており、取
締役の任務懈怠によって第三者に重大な損害を及ぼすおそれがあることから
設けられた特別の法定責任である。
 とすれば、266条の3の悪意または重過失とは、任務懈怠について存すれ
ば足りる。
 この点、本問ではB社の株主に著しく不利益を生じさせる内容の合併がな
されており、B社の取締役、監査役には善管注意義務違反(254-3,280-1、
民644)にあたる重過失があると言える。
(3)
 では株主たるXも同条の第三者にあたりうるか。
 思うに、株主も取締役の任務懈怠により固有の損害を受けうる以上、株主
も同条の第三者にあたりうる
(4) 
 従って、XはB社の取締役、監査役の責任を追求して損害賠償請求する(266-3,280-1)という手段を採ることができる。
                                                                    以上








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