水野愛子の民法News!

このページは、水野愛子がhsj法政治学部で担当したNews講義(メーリングリストを使ったゼミのようなもの)を再現するものです。下記の講義は96/02/5のものです。
あくまで一学生の作ったレジュメにすぎませんから、このデータを利用されたことについての責任は負いかねます。また、このページの著作権は当法律自習室に帰属します。


こんにちわ。愛子です。今回から数回にわたって、「債権者代位権の転用理論」をテーマにして判例紹介をしていきたいと思います。ただ、内容をわかりやすく、という声が強いので、判例紹介の前に一般論の説明をさせていただきます。

1債権者代位権とは?

第423条〔債権者代位権〕
 債権者ハ自己ノ債権ヲ保全スル為メ其債務者ニ属スル権利ヲ行フコトヲ得但債務者ノ一身ニ専属スル権利ハ此限ニ在ラス
2債権者ハ其債権ノ期限カ到来セサル間ハ裁判上ノ代位ニ依ルニ非サレハ前項ノ権利ヲ行フコトヲ得ス但保存行為ハ此限ニ在ラス

債権者代位権の学術的な定義は、

「債務者が有する財産権を行使しない場合、債権者が自己の有する債権を保全するため、債権者が債務者に変わってその権利を行使し、債務者の責任財産の維持・充実を図る制度」ということになります。

じゃあ、口語訳に挑戦してみますね。(債権者=高級クラブのママ、債務者=客、第三債務者[債務者からお金を借りてる人。ここではBさんからお金を借りている人。)=客の親友という設定です。)

A:「ねえ〜、Bさん、そろそろお店のツケ随分になるわ、払って下さらない?」
B:「ない袖はふれないっていうだろう。君と僕の仲じゃないか。ね、もう少しツケといてよ、今本当にお金がないんだ。」
A:「そんな〜、困るわ。ここのお家賃だって高いのよ。お金がなくても、
  宝石とか株とか、すぐにお金にできるものならそれでかわり"*1でもいいわよ。」
B:「そんな物持ってたらとっくに払ってますよ。」
A:「うそお。Aさん、ね、あなたホントはお金あるんでしょう。Cさんから
聴いたわよ。あなたに随分融資して貰ったって。それ返して頂いたら?」
B:「いや、あいつは高校時代からの大親友で、融資っていっても、
いつ返して貰うかも利息をどうするかも決めてないんだ。なじみ同士の貸し借りだから、
そんな、債権なんてモンじゃないし…」
A:「あら、いつ返していただくかお決めになってないなら、いつでも返して下さいって言えるのよ〜*2それに、利息だって、決まってない場合は年五分なのよ。*3
B:「だけど、Cには世話になったし、今は多分僕の融資した金で経営つないでるんだ。
  今取り立てるなんてことできないよ、親友として。」
A:「そう、それならそれでも結構よ。私あなたの代わりにCさんから取り立ててあげるから。」
B:「僕は認めないぞ。代わりに取り立て合ってお金は受け取らない。それに、僕が請求してないんだから、まだ債務の履行期の期限になってないってことじゃないか。」
A:「私の請求だって期限になるわ。それにあなたが受け取らなくても私に渡して貰えば、お店のツケとチャラになるじゃない*4。
B:「そんな…酷い。僕の意思はどうなるんだ!」
A:「お金ツケといて払えない人の意思*5を、どうして私が尊重しなきゃいけないのよ!」

…かくして、AはCに対して債権者代位訴訟を起こし、AのCにたいする債権について請求してその期限を到来させた後、Cにお金を払わせたが、案の定Aが受け取らないので、自分のところにお金をもってこさせて相殺した。
 予想外の時期にお金を返さなくてはならなくなったCは、やりくりが付かなくなり、手形の不渡りを出して倒産してしまった。

このお話へのコメント、待ってます!

注釈:*1=こういう風に本来の債務の内容(飲み代のツケという金銭債務)と違った内容の給付をすることでその債務を消滅させることを代物弁済といいます。
  もとの債務を消滅させる対価として他の物を給付させることによって成立する有償・要物の契約です。

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*2=お金を返して貰う時期が決めてない、つまり債務の履行期が決まってない債務を期限の定めのない債務といいます。
期限の定めのない債務の場合、債権者が請求したときに履行期が来ます。つまり、債権者は好きなときに返してくれと言えます。請求の時から履行遅滞になります。
#民法412条3項 債務ノ履行ニ付キ期限ヲ定メサリシトキハ債務者ハ履行ノ請求ヲ受ケタル時ヨリ 遅滞ノ責ニ任ス

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*3=利息を付けることにはしたが、利率を決めてない場合には法定利率です。
#第404条〔民事法定利率〕
 利息ヲ生スヘキ債権ニ付キ別段ノ意思表示ナキトキハ其利率ハ年五分トス

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*4=債権者代位権は、お金を借りているのにお金がない人が、自分の財産が減ってしまうのをぼーっつと見ている場合に、債務者の責任財産(一般債権者の債権のひきあてとなる財産)が消極的に減ってしまうのを防ぐために、債権者が代わりにその権利を行使して、本来あるべき財産状態に戻すための制度ですから、債権者(B)は第三債務者(C)に対して債務者(A)にお金を払えとはいえても、自分のところに直接もってこいとは言えないのが本当です。
 しかし、もし債務者の元に戻すことしか許されないとしたら、本事案のように、債務者が受け取らない場合には(実際に、どうせすぐに債権者に取られてしまうお金なので、受け取らない例が多い。)、債権者代位権は何の意味もなくなってしまいます。
 そこで、その場合には、債権者は自分のところにお金をよこすように言えます。
債権者代位権は債権者(A)にお金を受け取る権限まで与えるものではないので、本来の受取人である債務者(B)は不当利得返還請求権を持つことになりますが、債権者はもともとあった債権(飲み代のツケ)と相殺することができるので、事実上優先弁済を受けることができるという効果が生じるのです。

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*5=債権者代位権は、債務者が自分の意志でやろうとしないことを債権者が代わりにやってしまう制度ですから、債務者の財産の管理処分権を害してしまう面があります。ですから、債権者代位権を行使するには、それをしないと債務者からお金を返してもらえなくなってしまう状態にあることが必要です。
 これを債務者の無資力要件といいます。(債務が責任財産を超過する状態です。)

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 ところが、いくつかの場合には、債務者が無資力でなくても、債権者代位権の行使が認められる場合があります。
この、債務者が無資力でなくても債権者代位権の行使が認められる場合を、債権者代位権の転用、といいます。
次回以降、その判例を紹介します。

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"A study" by Aiko Mizuno
96/02/22/released
construction by A.M