前回のNEWSで振った債権者代位権の転用(無資力を要件としない債権者代位権の行使)を認めた判例を、4パターン紹介していきたいと思います。
今回は「登記請求権の代位行使」です。転用理論の先駆けとなった判例です。
判例:大審院明治43年7月6日第二民事部判決
(今回、判例が大審院時代のもので、判旨・上告理由等が原文カタカナで、とてもメールで多くの方に出すのには向かないので、要約バージョンのみとさせていただきます。自分の編集がはいる部分は【】書きします。)
事案:登記俺之(とうきおれの)さんは自分の持っていた土地を唯野仲買(ただのなかがい)さんに売りました。
唯野さんはその土地を更に代位公司(だいいこうし)さんに売りましたが、土地の登記は登記俺野さんのところにあるままです。
代位さんが登記の移転を請求できるのは、直接の売主である唯野さんだけなので【債権は対人的権利】、唯野さんのところに登記がない以上代位さんとしてはどうしようもありません。
そこで、代位さんは知恵を絞って、自分が唯野さんに対して有する登記請求権を保全するため、唯野さんが登記さんに対して有する移転登記請求権を代位行使する、という構成で裁判で争うことになりました。(訴える相手は登記さんです。)
原審は代位さんの請求を認容したので、登記さんは、下記の理由で上告しました。
1 民法423条に言う債権は金銭債権のように債務者の資力の有無に関わるものでなければならない
2 同条に言う債務者の権利は、一般債権者の共同担保となりうるものでなければならない
3 同条の適用には債務者の無資力が前提である。〜以下省略
【本事案では、おそらく唯野さんは既に代位さんから代金を貰っていたので、どうせ自分のものではない(だって唯の仲買人)売れたしまった土地の登記をしたくなくて、登記をほっておいたのでしょう。(自分のところに登記がいったん来て、売買という登記原因で唯野さんから代位さんに登記が移る、つまり、登記簿上に物権変動の過程が忠実に再現されると、唯の仲買人で土地を右から左に流すだけで土地を保有する目的のない唯野さんの様な人にも税金がばっちりかかってしまいます。登記するための費用もばかになりません。
ですから、仲買人唯野さんとしては、代位さんに、「移転登記は土地の代金と同時履行だ」といわれる場合なら仕方ないとしても、既に代位さんが代金債務を履行しており同時履行の抗弁権を失っている場合には、自分のところに登記を移すメリットは何もないわけです。
一方、代位さんとしても、唯野さんから登記を貰うんじゃなきゃいやだっ、なんてことは全然ないわけで、むしろ直接に登記さんから移転登記できるならその方が楽なわけです。(本事案のように債権者代位権でいくと、登記さんから唯野さんへの移転登記をせよという債権者代位訴訟に勝訴したって、その判決に基づいて唯野さんに対する間接強制(民事執行法172条)を求めうるだけで直接移転登記させることはできません。)
このことは、未登記の不動産を譲り受けた者(代位さん)が中間省力登記請求をするには、原所有者(登記さん)・中間者(唯野さん)両者の合意がある場合しか許されないと言う判例理論と深く関わります。
もし、登記さんや唯野さんの同意がなくても代位さんは中間省略登記請求ができるという少数説にたてば、この場合でも代位さんは債権者代位権を行使するという迂回路を通らなくてもいいことになります。中間省略登記についての問題もいずれ独立して取り上げようかな。】
なぜ、本事案で登記請求権の代位行使が認められたのか?
○唯野さんが登記さんに登記請求権を行使しなければ代位さんは登記の移転を実現できないから
○唯野さんが登記の移転をしないことに正当な理由がない(まだ代金を払って貰ってない等)から
問題
本事案は、結果的には中間省略登記請求を認めるのと類似の効果をもたらすものであるが、中間者の同意がある場合に限ってその効力を認める中間省略登記に関する判例(最判昭和40・9・21民集19-8-1560)との関係は?
判例が中間者の同意を必要とする理由:
1 登記は実体法上の権利変動の過程を反映すべき
2 中間省略登記請求を認めると中間者の登記請求権が失われる
しかし、登記請求権の代位理論を採用すれば…
上記1の理由について:
中間者(唯野さん)の登記請求権を実現させるものなので実体上の権利変動の過程を忠実に反映できる。
上記2の理由について:
中間者(唯野さん)は代位さんに(あれば)抗弁権を行使できる。
結論:
本判例は、中間省略登記請求を否定する判例理論と牴触するものではなく中間省略登記を否定する理由は債権者代位権行使の場合にあてはまらない。
むしろ、中間省略登記を否定するから代位権行使を必要とするといえる。