水野愛子の民法News!

このページは、水野愛子がhsj法政治学部で担当したNews講義(メーリングリストを使ったゼミのようなもの)を再現するものです。下記の講義は96/04/3のものです。
あくまで一学生の作ったレジュメにすぎませんから、このデータを利用されたことについての責任は負いかねます。また、このページの著作権は当法律自習室に帰属します。


皆様、こんばんわ。水野愛子の民法ニュースです。
今回は、借金をいっぱい抱えてしまったとき、こんな財産隠しをしようとする人もいるかも、というお話です。
(#実体法的には犯罪なので絶対まねしてはいけません。)

ここに、いろんなところからちょこまかお金を借りまくったあげく、自分の持っている
財産をすべて売り払ったとしても、借りたお金を全部返すことができなくなってしまった人がいるとします。(無資力状態という。必ずしも積極財産がない訳ではなく、積極財産-消極財産がマイナスになる、債務超過の状態をさす。)
仮にへのへのさんとしましょう。

そして、その人は、今はまだ土地やらお金やら有価証券やらを持っているのですが、このままではいずれ債権者達によってすべて差し押さえられ、取られてしまうことが確実であるとしましょう。

こういうとき、どうせとられてしまうくらいなら、と思って、あるいは、親戚や友人に譲って名義を換えて強制執行できないように名義を換えて、ほとぼりが冷めたら、等と考える人がでてきます。

でも、そういうことをしたとしても無資力状態の人間が債権者を害することを知りながら積極的に財産を減らすようなことをした場合、債権者は詐害行為取消権という手段にでることができます。
へのへのさんが奥さんのもへじさんに不動産を贈与して登記名義を移しても債権者はその行為を取消ししてへのへのさんに登記名義を戻すことができます。

では、へのへのさんが自己の財産を積極的に流出させる行為であれば、すべて詐害行為取消権の対象になるのでしょうか?(受益者の悪意等々の要件はここではおく。)
あきらかに財産が逸失する行為でありながら、判例上も原則として詐害行為の成立を否定されているものがあるのです。
それはなにかというと、離婚の際の財産分与です。
旦那のへのへのが奥さんのもへじと離婚するときの奥さんへの財産分与は、たとえそれが”一般債権者の共同担保を害する結果となったとしても”、”その額が不相当に過大であって財産分与に仮託して為された財産処分であると認めるに足るような特段の事情がない”限り、詐害行為として債権者に取り消されることはないといっているのです。(民法判例百選NO.20判例【第4版】参照)

ここでは、夫、へのへのの借金が債務超過になってしまったへのへの・もへじ夫婦が、これを逆手に取った応用版の財産隠しを試みます。

もへじ「あなた、突然だけど、別れましょう。」
へのへの「何をいうんだ、、たしかに僕は今借金ばかりだけど、、君にはこの借金で
    迷惑かけたりしないから、考え直してよ。」
もへじ「違うのよ。ずっと別れるんじゃなくて、ほとぼりが冷めるまでよ。
   でもただの協議離婚だと怪しまれるかもしれないし、あなたからあんまり
   ぶんどれなくなっちゃうわね〜。、、よし、あなた、浮気しなさい!
   ついでに私のこと暫くほっぽっときなさいよ。」
へのへの「なにいってるんだ?お前そんな浮気なんて、そりゃ全くなかったとは
    いわないけどお前のことほっといたりはしてないだろ、考え直して、、」
もへじ「だーからー、違うのよ。離婚届はホントに出すけど演技よ、演技。
    せっかくまだ財産多少は残ってるし、履行期が来たら全部取られちゃうの
    指くわえてみてたって仕方ないから、隠すのよ。
    もう強制執行できないように。」
へのへの「それと離婚とどういう関係があるんだ?」
もへじ「んもう。あのね、借金してるのはあなたよね。私じゃないわね。」
へのへの「うん、、ごめん、、。」
もへじ「だから、債権者とはいってもあなたの財産はもっていけても私の財産から
    金返せ、とはいえないわけよね。」
へのへの「そりゃ、そうだよ。そうか、じゃ、僕の財産みんな君にあげれば
     いいんだ。」
もへじ「だめよ。ただそれだけじゃ。すぐに贈与なんて取り消されちゃうわ。
    (民法424条を見せる)。」
へのへの「なになに、、債権者は債務者がその債権者を害することをしリてなしたる
     法律行為の取消を裁判所に対して請求することができる、、、
     なかったことにされちゃうんだ。」
もへじ「そういうこと。でもね、離婚の際の財産分与だとちょっと話が違うのよ。
    まず、夫婦が婚姻中に有していた実質上の共同財産を清算分配するって面と、
    離婚後における相手方の生活保障、って面があるから。ほかにお金もらえる
    はずの債権者達がいたって、貰えるものは貰えるの。」
へのへの「だったらすぐ離婚届だけ出せばいいんじゃない?まあ、確かにほとぼりが
    さめるまでまたなきゃいけないだろうけど、、、また一緒になるには。」
もへじ「だめよ。あなたが浮気して私のこと捨てるところが肝心なんだから。」
へのへの「それも演技しないといけないの?」
もへじ「そうよ、迫真の演技よ。あなたの財産を財産分与で全部貰うためには
    ただの協議離婚じゃ足りないの。がっぽり慰藉料取らないと。突然協議離婚
    して、財産は全部妻名義じゃ不自然だし、”財産分与に仮託して為された
    財産処分”だって債権者達が訴えかねないわ。」
へのへの「そうか!じゃ、僕が浮気して、君のことほっぽったからって君から離婚請求
    して、生活費とかのほかに慰謝料を請求して、僕が払えば、もう債権者達は
    てがだせないんだもんね。君の財産になるんだから。」
もへじ「そういうこと。浮気なんてなかったとか仮装離婚だなんて、そうそう立証で
    きるものじゃないもの。離婚届は出すし、暫くは別居するしね。あとは、
    あなたが自己破産して、免責された頃に復縁すればいいのよ。
    やっぱりやり直したい、もう浮気はしないってね。
    別れた人とより戻しちゃいけないって法はないもの。」
へのへの「そっかそっか〜。もう、債務の期限が来たらすってんてんになるかと思っ
     てたよ。みんなまだ気づいてないけど、
     もうやばい状況だからね。やりくりが。」
もへじ「そうよ。今のうちに手配しなくちゃいけないのよ。演劇部時代の親友に頼ん
    でおくわ。あなたと暫く浮気してくれって。あのこ今独身でフリーだから、
    ちょうどいいわ。」
へのへの「え、親友ってひょっとしてSちゃん?あ、役得だな〜へへへ。」
もへじ「…いっときますけど、ホントに浮気したら復縁してあげませんからね…。」

 かくして、へのへの・もへじ夫婦は離婚し、その際の財産分与によりへのへのの積極財産は皆無に等しい状況となり、債権者達はへのへのへの債権の殆どすべてを不良債権にしてしまったのであった。

     債権者達も詐害行為取消権を行使しようとしたものの、ばっちりへのへのが浮気したことになっていたため、○離婚原因がへのへのの不貞にある点、を裁判所は重視し、もへじへの財産分与は相当なものであるとされてしまったのであった、、、。
(よーするに仮装離婚と立証できなかったわけですね。)

そして数年後、へのへの・もへじは再婚した、、、。

(もっと詳しく知りたい人は、民法判例百選NO.20判例【第4版】を。清算・慰藉料・扶養料でどう違うかとか、詐害行為の成立を認める説の論拠はどうかなどが詳しく紹介されています。(#私のニュースはこの判例の事例とは違います。)

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"A study" by Aiko Mizuno
96/04/10/released
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