[司法試験論文15ヶ条]	制定;平成10年10月 2日
[司法試験論文17ヶ条]	改訂;平成11年 7月27日
[司法試験論文18ヶ条]	改訂;平成12年11月 2日
[司法試験論文18ヶ条]	改訂;平成14年11月 1日

第1編  総則 第1条  「素直な答案」が合格答案である。    2  「わかり易い答案」が合格答案である。 (解説) @司法試験に合格してもすぐに資格が与えられるわけではない。裁判官の採用に繋がる としても、一定期間の「司法修習」が予定されている。 Aこれは司法試験によって、「修習において教育し易いヤツ」を採用しようとしている ものと理解すべきである。そして「教育し易いヤツ」とは「素直なヤツ」である。 B「読み易い答案」、「流れのある答案」とはすべて「素直&わかり易い答案」である。 Cここではいかにして「素直&わかり易い答案」を作成するか、について検討する。

第2編  素直に読む 第2条  問題文は素直に3回読み、ていねいに分析する。 (解説) @問題文を理解できるまで読む。そして、素直に読む。 A読んでいる最中に「何か」を思い出そうとしてはならない。 B「何か」とは、例えば、「ああ、これ構成したことあるや。どうだったけな〜」とい うこと。 Cこんなこと思い出し始めたら、もう「素直なヤツ」とは言えない。

第3条  まずは当事者の主観を無視して外形的事実に注目する。 (解説) @最初の素直な判断は、外形的事実のみによって行われる。 A当事者は外形的事実に対応した意思を有しているものと推定することがもっとも素直 であり、まずは単純にその外形的事実を条文に当てはめる。

第4条  当事者の気持ちをつかむ。 (解説) @次に、当事者に感情移入し、当事者の関係を図示しながら、自分が、「甲」だったら、 「A」だったら、・・・どうしたいか、何を言いたいかを素人の立場から、素直に考え る。 A問題文を深読みする必要はない。ヒネくれて重箱の隅をつつく必要もない。 Bどういう気持ちになるのか、わからない時は判例の知識を使う。 (解説2) ^上記@の感情移入の際には、「その当事者から見えている事情」だけを前提とするこ と。 _民法においては、裁判官的視点で書いていい問題と当事者視点の問題があるが、当事 者視点の問題で裁判官視点になってしまうと、構成段階ではまりがちなので特に注意

第5条  自分が「鋭い」と思ったことは大抵「鋭く」ない。 (解説) @問題文から「これは○○が論点だな」とか「○○が出題意図だな」と気付いた場合、 それが「鋭いな〜、オレ」とか「こんなこと他のヤツは書かないだろうな」と思う内容 であればあるほど、出題意図を外している場合が多い。 Aそういう場合は、問題文を深読みしたり、重箱の隅をつついたりしているにすぎない。

第3編  素直に書く−形式面 第6条  答案用紙のチェック。 (解説) @取り違えると、まさに零点、評価は「G」。一科目でも取り違えると絶対に合格しな い。 A実際には、当該科目の試験が終了するまでに試験官に取り違えを申告すれば救済され るから、終了までに一度チェックすれば良い。 B書き始める前に「必ず」チェックする習慣をつけて、身体にチェック作業を覚え込ま せる。

第7条  問題文に則した「素直な構成」を行う。 (解説) @「素直な答案」作成のための大前提は「素直な構成」。 A「A及びBについて論ぜよ」とあれば、「Aについて」と「Bについて」を別々に論じる。 B「AとBの関係を論ぜよ」とあれば、「Aについて」、「Bについて」さらに「AとBの関 係について」として論じる。 C「AとBを比較して論ぜよ」とあれば、「Aについて」、「Bについて」さらに「AとBの 比較について」として論じる。

第8条  その問題解決のために必要な論点か(論点判断回避の準則)。 (解説) @まず「こんな論点書く必要ない」と思うことから始める。その後、(これは必要な論 点か?)(ウン、必要)(だって、〜だから)と頭の中で確認する。 A余分な論点を書くことで、その法律自体の理解が疑われ、点が引かれる。「知らない」 ことより、「理解していない」ことを恐れるべし。 B試験委員は、「理解しているか否か」により評価するのであって、決して「知ってい るか否か」により評価するわけではない。

第9条  迷ったら書かない。 (解説) @思い浮かんだ論点が必要かどうかわからなかったり、必要でないと思われるが自信が ない場合には、原則として論述しない。 A論点落としを気にしてはならない。不要なことを書いて「理解」を疑われるよりも、 必要なことを書かずに「知識」は少ないが、「理解」はできていると思われる方が、合 格には近い。

第10条  出題意図を決めつけるな。 (解説) @思い浮かんだ論点が必要かどうかわからない場合に、当該論点がたまたま理解十分で あったりすると、色々書きたくなるのが人情。 Aそうすると、出題意図を決めつけた上で、「これは必要な論点なのだ」ということを 自分自身に納得させるために、何とかして必要な論点であることの理由をこじつけるこ とになる。 Aこれは、明らかに「素直な答案」というコンセプトから外れる。 B理由を「こじつけ」ていることに気が付いたら、自分は「迷って」いると認識し、も はや論述しない勇気を持つ。 C自分が熱くなってしまうと、「こじつけ」ていることすらわからなくなってしまうこ とに注意。

第11条  論じる順序も検討する。 (解説) @刑法であれば必ず時間の流れに従う。これは簡単。 A憲法では前提論点が必ず(ほぼ)存在するから、まず始めに確実に押さえる。 B他の科目でも「当事者が何を主張するか」を考え、その順序で論述していけばミスは 減る。 (ex) ・ 法律で明文あるもの→明文のないもの

第12条  総論は各論の内容を決めてから考える。 (解説) @特に一行問題において、やみくもに総論を書いても「素直な答案」にはならない。 A総論を書く意味があるか、総論としての役割を果たしているか、を確認する。 B「総論を書く意味」とは、各論とリンクしているか、各論を貫く視点が示されている か、ということ。これができていない総論は書く意味がない。むしろ書いてはいけない。 C「総論としての役割」とは、土俵の設定(各論の射程範囲の決定)のこと。 Dすなわち、各論において論じる内容がどこからどこまでなのか(土俵)が示されてい ること。 Eこの土俵の外にあることは各論で決して書かない。 Fこう見てくると、総論を書く前にまず各論を考え、その内容を決定してからでないと まともな総論は書けないことがわかる。これが「素直な答案」に繋がる。 Gさらに、総論は「理解」を示すところ、また各論は「知識」を示すところであること を認識する。ゆえに、各論とリンクされた総論が書けていない限り、合格答案とは言え ない。

第13条  まず定義から入れ。 (解説) @一行問題であれば絶対、事例問題であっても必要であれば必ず、まず定義から書き出 す。 A正確なものを忘れてしまってもキーワードのみをつなげた手抜きのもので十分OK。

第14条  オウム返しの法則。 (解説) @問題文の問い掛けに則した素直な形式で結論を示す。 A「〜することができるか」と問われれば、「できる/できない」で答える。 B「どのような関係があるか」と問われれば、「〜という関係がある」という形で答え る。 C「甲の罪責を論ぜよ」と問われれば、「甲には〜罪が成立する」という形式にて答え る。 D「結論」にも当然配点があるのだから、こんなところで減点されるのはあまりにもっ たいない。徹底的に意識すること。

第4編  素直に書く−実質面 第15条  接続詞は的確か。 (解説) @短期合格のための最大のポイントと言っても過言でない。的確な接続詞を使用しなけ れば、「わかり易い答案」など論述できるわけがない。 A接続詞の使い方に細心の注意を払い、簡潔に、短文でまとめていく。 B「が」を使って無意味に文章を繋げることは絶対避ける。そこで文章を切って、接続 詞で繋ぎ短文にする。 C後半になって「しかし」等の逆説の接続詞は絶対使わない。わかりにくい文章になる こと請け合い。

第16条  規範定立とあてはめ。 (解説) @条文の文言解釈の場面では、この区別はとても重要。鉄則である。 A法律論文は「事例分析」→「問題提起」→「規範定立」→「あてはめ」→「結論」と 進む。 Bこの五つの役割をきちんと理解する。すなわち、「事例分析」、「結論」は具象(具 体的/生の事実)であるのに対し、「規範定立」は抽象(一般的/机上の論理)、そし て「問題提起」は具象から抽象への橋渡しであり、「あてはめ」は抽象から具象への橋 渡しである。 C通常よくあるパターンは「規範定立」と「あてはめ」が混同する。これは絶対避けた い。 D規範を具体的に論じてしまっては規範にならない。規範は一般的な論理思考の結果か ら導き出される「ルール」であって、当該事例についてだけ成り立つものは「特段の事 情」。 (解説2) ^条文の文言を提示しての問題提起。 ・ 「・・・」(〜条)する場合と言えるか問題となる。 _提示した条文の趣旨を指摘。 ・ 思うに、〜条の趣旨は、、、、 `_の趣旨から、その条文適用のための一般的、抽象的な規範を定立。 ・ とすれば、「・・・」(〜条)する場合と言えるためには、、、 a問題文の具体的事情を拾い、あてはめ b提示した条文の適用の可否、結論を明示形式的問い対応を忘れない。 c^_`については、端的に、さらっと。厚く書いていいのはa。厚く書く際も、書く 文章は短文で日本語として読みやすいものにすること。 d少ない行数でも、趣旨から端的に規範を定立することで、コンパクト且つ規範と当て はめを明確に分けた論述は可能。

第17条  自説の結論と趣旨からの理由付け。 (解説) @一行問題の場合、及び「・・合わせて反対説を批判せよ。」等の問題文での指示があ る場合を除いて、反対説は書かない(書く必要はない)。 A「反対説への配慮がない」として予備校答練での評価は良くないが、気にしない。 B元試験委員川端先生(刑法/明治大学)の言葉-「学説を羅列した答案の印象は悪い。 司法試験では罪責を問うているのであって、学説の知識を問うているわけではない。自 分はどう思うのか、どう考えるのかを説得的に論じるべき。その上で、なお余裕があり、 かつ有力な反対説があればそれに触れれば良い。論点が錯綜する問題では反対説を書く 必要はない」 C合格者答案の解析からも、こう言って差し支えない。これは、反対説を書いたが、当 を得た批判ができておらず、逆に「理解していない」との評価を受けたとも考え得る。 Dさらに、予備校テキストや基本書には色々な理由付けがあるが、論文試験では当該条 文の趣旨を理由付けにするだけで十分。「趣旨だけから論じる」と捉えても良い。 E抽象的な概念を並べて、むつかしい議論を展開しようなんて思う必要はまったくない。 F「わけわかんないこと」を書かない。意味不明の長い文章を書けば間違いなく「G」 評価。 G自分が理解していることだけ、自分の言葉で、やさしく諭すように(〜でしょ。だか ら、〜だよね。そうすると〜になるよね。ってな感じで)書いていく。 H常に「あっさり」論述することを心掛ける。

第18条  結論は妥当か。 (解説) @結論はどっちに転ぼうが関係ない、と言われるが、これは少し疑問。 A明らかに妥当でない結論を採った場合はかなり減点、若しくは最低の評価。 Bいかなる判決を書こうが法的責任はおろか政治的責任すら負わず、それゆえに国民か らの信頼しか拠り所のない裁判官を将来採用しようとする試験において、妥当な結論を 導き出せない人間を高く評価することはあり得ない。 C事実をよく読んで、いかなる結論が妥当か慎重に認定する。この時、第4条に記した 「当事者に感情移入できるか」が分かれ目。 D妥当な結論の宝庫は何といっても「判例」。百選を読み込んで訓練しながらセンスを 磨く。

付則 第1条(憲法統治) 背後にある原理、原則を必ず押さえる。 第2条(刑法) 客観は何か、そしてそれに対応する主観はあるか。 第3条(会社) ストーリーテラーになる。 第4条(刑訴) 例外のない原則はない。形式をいかに実質に近づけるか。そこに利益衡量あり。 第5条(全体) 「異同」、「相違」ともに、どこが異なるのかを訊いている。どこが同じかを直接訊い ているわけではない。 第6条(全体) 比較問題-「総論」定義/条文/共通点・共通原理/根本的差異(基準)       -「各論」(要件・効果) 以上