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3. 違法情報に対して早期の措置を執るために
これまで、プロバイダーの「義務」に着目し、情報の内容を判断して削除等の措置をとる「義務」は認めるべきではないことを強調したが、被害の拡大の防止という観点からすると、違法な情報の削除を即座になしうる立場にあるプロバイダーが適切な措置を早期に執ることは望ましいことだと言える。そこで、プロバイダーとしては、約款に置いて一定の場合には削除しうる旨の免責条項を置いてそれに対処する事が考えられる。二.4.で述べたように、コンピューターネットワークでは情報の複製・再発信が容易なため短時間に情報が拡散してまたたくまに被害が拡大してしまうおそれがあるので、問題の情報が違法なものであるかについて法的な判断が下されるまで、当該情報に対するアクセスが停止される要請があるのである。こうした場合に、アクセスの停止や情報の一時削除についての免責条項は、プロバイダーとユーザーとの間での約款に通常記載されているが、その削除権限があまりに広く、削除が恣意的・行き過ぎで通信の自由を害する様な場合、電気通信事業法7条の「不当な差別的取扱の禁止」にあたるような場合も考えられる。また、ただ単に約款等で違法なコンテントに対する注意喚起や削除等の権利を留保したのでは、内容に関与する権限があったのだから、具体的に知った場合には削除等の義務を負わねばならない、すなわち、違法の判断の責任を負わなければならないという結論に行きがちである。 「プロバイダーが、そのサーバー上にあるユーザーのホームページで発信されている情報によって自分が損害を被ったという者からの申立を受けたとき、または公的機関から要請を受けたときは、判決、仲裁、当事者間の合意等で問題が解決するまで、プロバイダーの判断で、一時的にホームページの表示を停止できる」 という契約条項を設け、プロバイダーの法的リスクヘッジのために、被害者等からのクレームという外形的事実(クレーム内容の当否=ホームページ内容の違法性の有無は問わない)を契機として、ホームページの一時的表示停止権を行使できる(行使するかどうかは、プロバイダーの自由)ようにする。という見解を指示したい。 内容の評価ではなく、事実的契機をよらしめることで、内容の評価に係らせること、すなわち、評価という微妙な問題に伴うリスクを、プロバイダーが回避しうる。約款等で「違法」なコンテントに対する注意喚起や削除等の権利を留保しているケースなど、内容にこだわったものでは、コンテントが違法視されるものであることを知った場合は、約款の規定に従い何らかの必要な措置をとらない限り責任を負うという結論になりやすく、プロバイダーが違法の判断の責任を負うことになってしまうが、いかなる場合にいかなる措置をとるかをあらかじめ明示しておけば、そのような判断の危険を負うことはない。更に、プロバイダーによる言論選別につながるという懸念やプロバイダーによる過度にコントロールするという事態もまた回避することが可能である。(なお、このような条項(予め会員との間の契約で、ホームページ表示の一時的停止権等を留保しておいく。)を設ける現段階での実際的なメリットとして、プロバイダーの場合は発信された情報の内容の違法を原因として責任を負うべきでないとすることは一個の見解にすぎないので、実際に被害者からの申立を受けた後も対処せずにいると、他人の法益を侵害する発信を継続させたとして、被害者に対する不法行為責任を問われるリスクが実際上存するが、このリスクの回避の機能が期待される。 いまだインターネット・アクセス・プロバイダーの場合の判例もない状況で、プロバイダーが進退両難に陥るような法的リスクをヘッジするためには、プロバイダーが自主的判断で違法(と思われる)情報に対してとった措置についての「権限」の留保が不可欠であろうと考える。)
また、この場合、契約で放棄しているのは、有線送信権(個人的法益)の放棄にすぎず(しかも、他のプロバイダーと契約したり自分でサーバーを持てば、いくらでも送信できるのだから、制限された放棄である)、私法上の契約で放棄しうると解して良いと考えるからである。 |