熱帯

森見登美彦・文芸春秋

やほーい。しらたまちゃんの可愛さが物語の救い。

小説家が小説について書く。創生主が世界を語る。魅力的なテーマなのだろうか。
恩田陸の「三月は深き紅の渕を」「中庭の出来事」もそうだったか。
辻村深月のチヨダコーキ先生もそうか。
朱川湊人も『唯一無二の絶対真理』という本をキーアイテムにしていたね。

千一夜物語の入子構造に着目し佐山が書いた
最後まで読んだ人間がいない、という『熱帯』をめぐりマトリョーシカが始まる。
メモを書きながら読み進めたけれど、『エヴァンゲリヲン』と同じく
世界観を楽しむもので、舞台装置を詳らかにすることは目的では無いのかもしれない

以下、ネタバレご注意。
◆1章の「沈黙読書会」は、現実世界としてモリミンこと森見登美彦が出会った『熱帯』を持つ彼女が語り始める。

◆◆2章の「学団の男」は、1章の彼女が語る物語という入れ子。白石珠子さんと池内さんが海野千夜さんらと本物の『熱帯』について語り始め、池内さんは千夜さんを追い京都へ。

◆◆◆3章の「満月の夜」は、2章の池内さんの手記という入れ子。千夜さんを追う池内さんは暴夜書房、芳蓮堂、夜の翼、京都市美術館、進々堂、そして市原のアトリエを巡回する。
    その中で、マキさんの語りという更なる入れ子。「満月の魔女」の作者である牧信夫の存在や、今西さんや永瀬栄造が登場して各々の語りという入れ子が並行する。

◆◆◆◆4章の「不可視の群島」は、場面が大きく変わる。3章の池内さんがアトリエで感じた世界観なのか。
      作中作『熱帯』なのか。
      主人公は孤島で学団の男である佐山と出会う。

◆◆◆◆5章の「『熱帯』の誕生」は、4章と地続きの世界。
      主人公は魔王・永瀬栄造から物語の端緒を聞く。
      永瀬栄造は長谷川から物語の端緒を聞く。
      長谷川は商人シンドバッドから物語の端緒を聞く。
      シンドバッドはシャハラザードから物語の端緒を・・・と思いきや、ここで場面は主人公の視点に戻って魔王が佐山に討たれるところを見る。
      主人公は観測所の島で

それにしても。
何かしらの解が欲しくてブックレビューを散策。
2021年のスタートも上々だ。

(21/01/07)


茶色い本棚(国内作家)へ戻る

私の本棚へ戻る

タイトルへ戻る