女王はかえらない

降田天・宝島社文庫

そうそう、こう言うのを読みたかったのですよ。
さすが、「このミス」シリーズ大賞受賞作だ。

もう、意地悪くね、『女王』はメグなんだろと当たりをつけて読み始めたわけ。エリカでもマキでもないと。
思わせぶりな1章が終わり、2章に入るとまた仕掛けがある訳でしょ。
いっそ、愛ちゃんがカギを握る序盤からの登場人物なのか?とか、いろいろ深読みしたさ。

こうなるとオッサンが雅史なのかと思うじゃないか。
ところが2章を読み終わり、3章が始まると佐々木がオッサンでメグが2章で先生なんだな、と訂正。
それすらもストンと落とされるから気持ち良い。
なるほど、これは辻村深月か、菅原榊。いや道尾秀介か、ラットマンやシャドウ。長沢樹の「消失グラデーション」も懐かしい。

大崎真琴、恵雅史、牧村敏江、襟川純子。
いや、真相はそんなものではなかった。
「蠅の王」か! そっちこそが真相なのか。
2章からもさらに20年経過しているのじゃないか、とすら思ったけど
義郎さんが時計がわりになってくれたね。

どれほど疑ってかかっても、私ごときの読者には
この真相の深淵は窺いしれなかった。だからこそ読む価値がある。ストンと落とされて気持ちが良い。
恩田陸も、こういうのを待ってるんだけどな。
気付かなかった仕掛けを、伏線を一つずつ解いていく。そんなのが読みたい。
序盤の謎めかしさが、最後までアレは何だったんだろうと終わってモヤモヤするのは、もういいよ。

(16/05/30)


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