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横山秀夫・文春文庫

ちょうどNHKでドラマ化もされており、ドラマ1話目を先に見てから上巻に取り掛かった。
そこからは上下巻を読み終えて、ドラマを復習。
基本的に原作贔屓の私ではあるが、これはドラマも素晴らしい。ピエール瀧、いい役者だなぁ。
あんにんこと、AKB48入山杏奈もチョイ役だけど重要人物を演じる。
あの美形で醜形恐怖症と言われてもねぇ・・・、辛いねぇ。

警察の内部抗争と言えば、警視庁と神奈川県警のシマ争いみたいなものは知っていたが
支店と本庁、ノンキャリとキャリア、刑事と警務、いろんな対立軸があるんだね。
自らの旗幟を意識しながら、立ち位置と矜持を満たすだけの仕事が出来ているか。
エースと呼ばれる人はそれができ、出来るからこそいろんなものを背負わされるんだろう。綺麗なものも、汚いものまでも。

タイトルにもなっている誘拐事件の符牒であるロクヨンを軸に話は進み、当然ながらに大団円を迎えようとする。
広報官とブンヤたちの対立軸も、100点満点とはいかないまでも好感を得るだけの進展は読んでいてグッとくる。
そんな中で、もう一つ大切な物語の軸たるあゆみの行方に関する結論に私は唸った。なるほど、こういう解もあるよなと。

恩田先生の投げっぱなしジャーマンとは違う、かと言ってすべてに解が与えられる訳でも無く
現実社会と同じように謎は謎のまま分からないものもあるし、
エヴァンゲリヲンの舞台装置の数々の様に雰囲気だけを醸し出して解が無いものもある訳だ。

それでも不満には思わないのは、この作品が秀逸だと言うことなんだろう。
広報官の生き様だけでもタップリと読み応えがある証左か。
これはなかなか骨太な一冊に出会う事ができた。お腹いっぱい、満足です。

(15/05/23)


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