廃用身

久坂部羊・幻冬舎文庫

知人の書評で気になり図書館を眺め続けていたんだけど、書店である日背表紙が目に飛び込んできて手に取ってレジへ向かった。
こういう話だったのか。
実際、Aケアは老人介護の現場で起こり得るよね。圧倒的なリアリティに脱帽。

正義と狂気は表裏一体。
狂気と言うところでは、「蝿の王」でラーフを虐殺するシーンを思い出した。
メリットがデメリットを上回っていれば、治療として価値があると言う功利主義な面も正しく
ヒューマニズムの観点で、尊厳も肝要なものだろう。
そしてまた、一度下した決断が、未来永劫過たないと言うものでもあるまい。
ある日の正義が、将来の禍根になることなんて枚挙に暇は無い。

当人の希望と言う錦の御旗だけが、正当化の根拠であり、
それが自発的なものか、或いは誘引されたものか、そこまで辿ると
もう何に拠って立てばいいのかも分からないね。

一つの時代に正しいとおもわれていたことが、後世になって覆ることなんてざらにある。
廃用身も、数年後の未来で無いと断定できる人など居ないだろう。

(15/02/24)


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