エイジ

重松清・新潮文庫

写実的と言うかリアル。
こういう舞台が整う事は、もはや特異ではないかもしれない。
同級生が通り魔だった、そんな驚きの出来事を3人の中学生の視点で捉える。
タカやんが捕まった後も繰り返される通り魔事件。
世の中にはびこる悪意。善意は悪意に連戦連敗なのか。
クールに距離を置く悲運の秀才タモっちゃん。
被害者に投影して恐怖を実感したツカちゃん。
狂気をなぞろうとして自分の「その気」を試し始めたエイジ。
キャラはよく描きこまれてると思う。

石田衣良のIWGPシリーズにも通じると思うけど、独りゴチるような書き方、好きだね。
「かわいそう」と「許さない」の間に、ぼくの気持ちはある。とか、
「幸せ」かどうか尋ねられたら、答えはやっぱり四捨五入でYESになる。とかね。
みんなそんなもんかもよ。諸手をあげて幸せを語れる人なんザ恋愛したての浮かれポンチくらいのもんよ。
エイジと相沢さんに岡野を交えた恋模様。青春だねぇ。
中学時代は思春期ど真ん中。好きな子の前で素直になれなくて、自分に嘘をつく。

キャラが立っているのは子供たちだけではない。さほど出番は多くないけれど高橋家の両親も良い味出してる。
のほほんと子供相手に一緒にゲームに興じる母の、ときどき見せる意地悪。
「最近、ギターの練習してる?」
練習していないのを分かってて聞くんだから、大人はよく見てるんだね。

中学時代は常に他社との関係を問われ、あちこちで序列がつく。
テストの順位は言うに及ばず、好きな子のランキング、部活の上下関係。学校を一歩出れば、更におっかない不良がいる。
親友がいて、同級生がいて、部活の仲間がいて、同い年の生徒がいる。こちらも学外に塾の友達がいたりする。
先生や親や世間からは、優等生と言う枠にはめられようとする。
私も中学時代までは優等生グループに所属しつつ、口が減らないため悪ガキ達ともそこそこ付き合いのできる
タモっちゃんタイプだっただろう。

40歳を前にして、仕事の壁にぶち当たってるけど
中学時代は、その時なりの悩みに煩悶としていたんだな。
よくよく考えると、本質的には今とあまり変わらない。
人ってそうそう変われないのだ。

(13/06/30)


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