これはDVDも借りて見なければ。
「オーデュポンの祈り」よりも分かり易く、
「ラッシュライフ」よりもシンプルで、
「重力ピエロ」よりもスッキリとした感じ。
幕間に事件の20年後のジャーナリストの視点を挟む事で
読者に事件の一面が明かされる。
この辺りは、田中芳樹が銀英伝の中で後世の歴史家を活用したのに似てる。
「トゥルーマン・ショー」だっけか、こんなハリウッド映画無かったっけ?
巨大な国家権力に陥れられようとしている青柳を救う市井の一個人。
もちろん旧友らは分からないでも無いけど、将門くんや命を散らしたキルオらの
インセンティブにはややご都合主義も感じるけど、そんな事言ってたら
この一大エンターテインメントが成立しない。
今のところ、伊坂作品の中では一番面白くスイスイ読めたかも。
「ラッシュライフ」ももちろん面白かったのだけど、あちらの方が伏線が
入り乱れており、整理するのに時間がかかった。
ラストをどうするのかと思ったけど、悪くない。
事件から3ヶ月後に、ロック岩崎や、両親に届けられたメッセージが爽快。
最後に花◎
一つ気になったのは、会話のやり取りで文字数が揃う行が幾つか見られる事。
これは当然意図的なんだろうな。テンポ感を出そうとしたのかな。
だとすれば、結構秀逸なアイディアだと思った。偶然なら、それはそれで大したものだ。
■DVDを見て
キャストのイメージが違ったな。森田(吉岡)とカズ(劇団ひとり)は逆かと。
カズの方が線が細いイメージがあり、森田はBoBAさんの様なゴツいイメージがあったけどね。
キルオも濱田岳でしたか。彼は伊坂作品の映像化の肝なのかね。他作品でも起用されてるね。私のイメージだと松田翔太だった。
首相公選制やセキュリティポッドはばっさりカットね。ま、説明に割く時間も勿体無いし已む無しか。
そのためセキュリティポッドのメンテ係の将門君の出番も無し。
最後の花火は彼がいないと、あそこまで大掛かりな仕掛けは難しいと思うが。起爆装置も携帯電話って訳じゃ無かった。
尺の都合で森田の出番はパレード現場に連れて行くだけで、青柳が痴漢に間違われるシーンがカット。これは惜しい。
ラストの「痴漢は死ね」にも一枚噛んでいただけにね。森田は「森の声」もカットなのが残念。
原作の晴子は報道されている青柳像に違和感を感じて、それで青柳を救おうとするのだけど
事件前に一粒残さずご飯を食べたと言うエピソードが割愛されてしまった映画版では晴子のモチベーションがやや稀薄。
でも総じてよく出来てたと思う。不満は無い。