儚い羊たちの祝宴

米澤穂信・新潮社

洋題は「バベルの会の年代記」。なるほど、時空を超えたバベルの会に連なる人々のエピソード。
しかし、回りくどい。そして、結果はどれも釈然とはしない。

○身内に不幸がありまして
「バベルの会」の会員は、丹山吹子。
テイスト的には恩田陸の「ユージニア」か「蒲公英草紙」か。
吹子は狡猾に殺人を犯した。

○北の館の罪人
「バベルの会」の会員は、六綱詠子。彼女は影が薄いが、あまりの罪は看破した。
早太郎はあまりの罪を看破し、彼女の絵を描く時に手を赤く染め、カモフラージュの紫にしたってハナシ?
あまりの復讐譚も、早太郎の放蕩も帰参も、虎一郎の存在感も、詠子も全てが迂遠。

○山荘秘聞
「バベルの会」の会員は、前振家の息女。ほぼ名前だけ。
「かまいたちの夜」かと思いきや、「ミザリー」。
しかし屋島守子が20歳そこそこだとすると、前任の前降家に仕えていたのは幾つの時なんだ?
歌川ゆき子を始末してしまっては、すぐに追及の手が伸びるのでは?
“煉瓦のような塊”も何を指しているのかよく分からん。【⇒これが札束を指すと教えてくれた方がいました!かおりも越智も口止めされているんだとか】
変わった肉は、アミルスタン羊だね!

○玉野五十鈴の誉れ
「バベルの会」の会員は小栗純夏。
上位自我に縛られるのは「禁じられた楽園」にもそんなとこが有った様な。
自分に寄せられていたのは友誼ではなく、家に対する忠義だったと知った時はショックだったろう。
ジーヴスも、イズレイル・ガウも知らんがな。
賜った死を容れなかった時、当主のばあさんはどう思ったんだ?
ツメの甘さが不自然で、実は真実ではなかったりして。それは深読み?
ラストはよく分からない。

○儚い羊たちの祝宴
「バベルの会」の会員(正確には元会員)は、日記の書き手としての大寺鞠絵。厨嬢の夏をして、バベルの会員を狩らしめた。
アミルスタン羊の意味するところは、すぐに分かった。
会長曰く鞠絵の持つ強さ、会員がそれを持たぬ弱さ、ってのは今ひとつピンとこないが。

古典部シリーズや、四季シリーズに期待かな。図書館での予約待ちだな。

(10/08/07)


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