不祥事

池井戸潤・講談社文庫
痛快。
もちろん、そう言う感想を持った。
でも、“狂咲”の言動が認められるのは、その能力に裏打ちされてこそ。
単純に快哉を叫ぶ訳にはいかず、自分自身も頑張らねばと妙なプレッシャーを感じた。

花咲に振り回されている感のある相馬も、敏腕融資マンとして副支店長と渡り合ったはずなんだけど
途中から妙に本部エリートに対して腰が引けちゃうキャラに変わってしまってる。
でも、どこかのんびりはしているけれど、要所でズバッと切り込む。
「荒磯の子」のラストなんて好きだなぁ。

この筆者はキャラの描写が良い。
冷酷非道な敵役として描かれる真藤も「彼岸花」で、微かに内面を覗かせる。
それが安易じゃないのが、また良い。
子飼いの部下たちはエリートのはずなんだけど、結局どこか抜けててオチがついちゃうのは已む無しか。
「腐魚」「不祥事」ではビジネスマンたちの矜持が良い。

大学の後輩が某メガバンクに勤めており、窓口業務などこんな感じだったのかなって想像した。

どの会社も多かれ少なかれ問題を内在して、それらには当然原因がある訳で。
失敗が許されない風潮では、真因が隠蔽される事もあるだろう。
「過払い」では花咲が河合や中島の口座を確認するんだけど、それも違法なんじゃないのかね。
ウチの会社に“狂咲”みたいな正論キャラはいるかな。いても芽を摘まれないかな。

この筆者の他の本も読んでみたいね。

(08/05/25)


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