北海道三毛別のヒグマ襲撃事件を取り扱った2冊。
最初に「羆嵐」から読み、次に「慟哭の谷」を読んだのだけど、この順番で正解だったかな。
三毛別の事件を仮名で小説化した手法は、八甲田山に通じるものがある。
結果的に羆を撃ち殺した銀四郎の矜持、熊への畏れ、周囲から疎まれている孤独がよく描かれており
この辺りはヘミングウェイの「老人と海」を思い出したりもする。
自然の猛威の前に人は無力であり、そんな厳しい土地を捨てて逃げ出した人も多いけれど
他で生き抜けずにたどり着いた、逃げる場所すら無い人たち、そんな外部要因も哀しい。
三毛別以外のヒグマの食害事件をノンフィクションで取り上げたのが「慟哭の谷」。
星野道夫の最期もヒグマ撮影の折の事故だったとは、まったく覚えていなかった。
知床五湖を訪ねた時、熊でも見えるかな?と呑気に思っていたけど
クマよけスプレーも、大きな音も、実際はクマよけには絶対の効果が無いのだとすると
あんな平地で逃げ隠れもできないような場所で熊と出くわしてしまったら、ゾッとする。
温暖化で熊の生息域と、活動期間が隆盛になると、人間の世界が脅かされること間違いなし。
人間は身の程を知るべし。