バトル・ロワイヤル

高見広春・太田出版

これは先に映画を見ました。20世紀最後に見た映画です。
映画を見た後は不快感とまでは言わないまでも、スッキリしなかったですね。
やはり惨殺シーンは重たいモノです。

でも、R15というのはどうなんでしょうか。
創作側が、対象として感受性の強い中高生にみてもらいたかったと言うのに
規制されてしまったのは残念な気もします。

残酷な描写があったということが理由だったと思います。
たしかにスプラッターなシーンは多かったけど、粗末に命が捨てられるという意味なら
私の好きな「特攻野郎Aチーム」とかのドンパチの方が、はるかに大勢の人が無意味に死んでいきますがね。

映画を見た後で感じたのは、監督が言いたかったことは『大人の愚痴』かな?と。
つまり

お前らなぁ、俺達が子供の頃はなぁ、大人の言うことには嫌々ながらも
文句言わずに(まぁ、文句の一つは垂れたかもしれんが)、ここまでやってきたんだよ。
それをなんだ、お前らは。ちょっと気に入らないことがあれば、文句言うどころか反抗しやがって。
そう言う態度は百年早いんだよ。俺達に逆らうとなぁ、こういう目に遭うんだよ。
黙って大人のいうこと聞きやがれ。
とね。

むしろR15は、こういう大人の愚痴が気恥ずかしいからか?って感じですね。

あと映画で気になるのは冒頭のシーンと川田の最期。
冒頭は昨年の大会優勝者が帰還するシーンなんですけど、前回優勝者って
川田なんじゃなかったの?

その川田の最期で「いい友達に出会えて良かった」みたいなセリフがあるんですが
これが監督のテーマだとしたらあまりにもチープですよね。やっぱテーマは大人の愚痴で良いんだよな。

映画見た後ですぐに原作を買いました。
いつもの通り読み比べです。やはり映画ならではの脚本・演出ってのがありましたね。

大きな違いと言えるのが教師役キタノの設定かな。これでエンディングがちょっと違うものね。
あとは三村かな。映画だと3人組なんだけど、小説だとむしろ逆で、飯島を撃つのが三村。
これは、小説の方が全員に「業」を負わせよう、という姿勢が強いから、と言えないかな。
殊更に典子の戦闘援助のシーンを描写したりね。

映画で滝口と相馬のシーンが省略されているのは、2時間と言う時間的制約から
山場を削る必要があったからかな。相馬の内面描写が欠落したのはちょっと残念だけど
それでも、映画は十分にキャラクターの存在感あったよね。流石、柴崎コウ!
アナザヘブンでの奇態は伊達でない!

同じく時間的な制約なのか、清水の最期、倉元、矢作のカップルの最期、南と稲田の最期は
小説と映画では異なるんですよね。
杉村も小説の方が大変だったよね。あちこちで桐山や相馬に刺されて。
琴弾との遭遇シーンが一番感動した、と言うのが私の後輩の所感だそうです。

そして、何よりの違いが舞台設定かな。
原作では舞台は日本じゃないんですね。映画も日本と言ってるわけではないけど
大東亜共和国とか言う設定なのね。川田と七原との会話で政治体勢の批判を行うくだりがあるんだけど
映画は一切カット。秋也の親の設定も違うしね。

ま、秋也の親の場合は、父親の自殺前夜の
「ま、お前も明日から中学だガンバレよ。と言っても何をガンバルんだかわかんねぇけど」
みたいなセリフがそもそも大人の愚痴っぽくて私としてはテーマに合致なので満足なんだけど。

スケールは小説の方が大きいかな。
でも決して映画も悪くなかったと思う。
もう一回見ても良いな。

前田亜季も千草役の栗山千明も可愛かったし。
栗山千明って「死国」のヒロインだったんですね。見たよ、あれも。
まだ16歳って本当かね。84年生まれでしょ、「死国(98)」の頃は14歳?
山本太郎くらいかな、今回のキャストで私より年上なのは。やっぱりあれで中学生はないよな。
そして安藤はホントにガンバの宮本に似てる。
オリジナルの栞ちゃんの声が前田愛だったとはなぁ。活かす人選だよな。
でもどうせだったら、お姉ちゃん主役の方が良かったかも。

とにかく楽しませてもらいました。
20世紀最後に鑑賞した映画も、最後に購入した小説も当りでした。

(01/1/8)


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