白夜行

東野圭吾・集英社文庫

私、どちらかと言うと原作派なんですが、これはドラマが秀逸だったかな。
石丸P、脚本森下佳子、監督平川雄一朗、そしてセカチュー以来の綾瀬はるかと山田孝之のコンビ。
脇を固めるのも良い役者でしたね。余貴美子、八千草薫、武田鉄矢・・・

何より1973年から92年にかけてと言う昭和から平成へ至る時代を舞台に描かれた原作を、
見事に平成の舞台で書ききったよね。原作、脚本ともに苦労があったと思うよ。
携帯電話が当たり前の情報通信手段の今、それが無い時代の原作を違和感無く「移植」してきたのは見事。

後はドラマは時間の制約から、登場人物を絞り込んで今枝事務所はバッサリ削除して
ひたすら笹垣の執念に置き換えたのも良かったね。
そのために原作で落とさなくて済んだ命を散らした人には気の毒ですが。
松浦の使い方とか上手かったよね。原作ではひたすらクールな亮司が雪穂に手玉に取られるシーンとか。
やっぱり毎回コンスタントに60分の間で起承転結を付ける必要のある脚本家は大変ですね。

礼子の死に際、雪穂にかける贖罪の言葉が良かったよ。一番思い出深いシーンかもね。
八千草薫って、若い頃はさぞキレイな女優さんだったんだろうな。
吉永小百合とかもそうだけど、品が良い雅な女性って幾つになっても素敵ですよね。
余貴美子の存在感もドラマの出来を引き締めてましたね。事件当時からの中立軸としてね。
この辺りもドラマ独自のアイディアって事は脚本が当たったって事か。

ラストの切迫感と妥当性は原作はイマイチだったね。何故あのタイミングで亮司が死ぬ気になったのか。
雪穂は再婚できて、それがゴールだったって事?
ドラマは(園村の自白と言う強引な契機に拠るけれど)過去の真相だったり、
母親の不測の死だったり、典子から指摘された幽霊を看破した笹垣への愛だったり、
クライマックスとしての高揚感は十分だった。

今回はカラクリを知って読むと言う、ミステリを味わう上では邪道だった訳で、
どうしても原作に辛くなってるかな。知らずに読んだらやっぱり巧妙に張られた伏線を
一つずつ明らかにしていく手法と、2人の内面を描かずに繰り広げたこの悲劇に賛辞を贈ったのかもね。
東野圭吾は別の作品で改めて感想を述べてみたいですね。
でも取敢えず次に読むのは恩田陸と決まってますが。

(06/3/28)


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