貸してくれた先輩から、ラストはやられた。と聞いていたので、いろいろ考えながら読んだけど、うん、あれは分からん。
槇村悦子と高野章子ね。随分なミスリードだこと。冒頭の絡みで『スーツ姿』と言われれば勝手に男性を想像するが、さにあらず。
『おばちゃん』としか呼ばせない理由も、個人を特定させないため。
ラストはてっきり高野章子がベンツを毒殺するのかと思ったのだけど大ハズレ。
百合の園の園長先生が己の死に当たって見せたエゴなど、偽悪的な世界をどうにか生き抜こうと言うテーマは最後の最後に救いが示される。
何となく、してやられた感は歌野昌午「葉桜の季節に君を想うということ」を想起させた。
雑誌編集者・原田の目線で、やや強引な展開も見受けられるけど、全体的に技巧的な作品だとは思う。
6章の最後で、高野章子の死に責任の一端を感じてしまう原田と、誰にも訪れる死として語る院長との会話は好きなシーンの一つだな。