私と踊って

恩田陸・新潮文庫

読書は合コンに似てるのかもしれない。
読み始める前が、会う前が一番ワクワクする。
何が書いてあるんだろう、恩田先生の事だから捻りを効かせ過ぎてはいまいか。誰それの紹介筋だから、きっと良い子に違いない。
そして読み終えてお気に入りの一冊になったり拍子抜けしたり、会ってみてまた会いたいと思ったり、そうでも無かったり。
合コンの場合は、こちらの思いだけではなく、相手の気持ちも大事。読まれるだけの本とは違うか。
読まれる本の言い分も聞けたら面白いのに。

ここからはネタバレご容赦、読後すぐの短観を。

■心変わり
なんだこれ。あまりに短すぎるから、謎の設定と、回収が近過ぎて、一方的に進展するスピードに付き合えない。

■サイコロの七の目
来た、かしらん!
ふーん、恩田流の星新一?

■忠告
だから、こんなの恩田陸でわざわざ読まなくても、他でも読めるわけ。
でも、作家さんは、時としてこう言うのも書きたいんだろうな。

■弁明
演技かな?幽霊かな?
…って?だから?
でもあとがき読んだら、カメオなのか!それならば、まだ味わい方も異なるか。

■少女界曼荼羅
やっぱり、もう、まったくついていけない。
建造物に対する恩田先生の考えは、生き物なんだろうな。
「MAZE」や、「上と外」、とかとか。
生きてて少しずつ形を変えてると。「CUBE」みたいなハナシでもあるのか。

■協力
幕間シリーズその2か。変化球も投げられます、と。

■思い違い
うん、手の込んだ仕組みのようにも思えるが、もっともっと面白いのを渇望してるのです。ライト過ぎ。

■台北小夜曲
あれ?来ちゃった?スピリチュアル系なの?これ。
でも、分からないんだって。

■理由
いよいよ全く分からない怒るぞ。
あとがきに寄れば、児童文学雑誌への寄稿だったのかな。舐めてる?

■火星の運河
タイムトンネル。そのまま。若い頃の恋の行方。
アジアやな感じが如何にもメロウ。

■死者の季節
これが一番面白いのかもしれない。
捻って落とそうとせずに、フワフワとダウナーで低いところをたゆたう感じ。

■劇場を出て
これはチョコレートコスモスの飛鳥とか?
短過ぎて何の評価もできない。
へぇ、多部未華子の写真集への短信なんだそうな。

■二人でお茶を
芸事ネタ。これは、この後もずーっとこの感じで乗り切っちゃうわけ?

■聖なる氾濫
短過ぎて何の評価もできない。ここから3つがシリーズ作なんだそうな。

■海の泡より生まれて
「MAZE」っぽさがあるが、雰囲気は綺麗だ。
ただ、やっぱり分からない感の方が強いが。
分かろうとはせず、雰囲気を味わうという恩田ワールドの楽しみ方を考えると、まずまずなのかな。

■茜さす
キャラクター連投。
しかし、この雰囲気を作って書くまでのネタか?と考えると、ストン不足で物足りない。
ただし長編で引っ張ってのオチがこれだったことを考えると、もっと怖いな。

■私と踊って
というわけで、これでおしまいか。
これもさ、低体温な雰囲気はミステリアスだし、急に齎される訃報は雰囲気あるけど、
核がないフワフワ感に手応えが足りないかな。
これが作者本人のお気に入りと言うのだから、何をか況や。

■東京の日記
戒厳令下の東京。コントロールされたマスの意識みたいなものは、「Q&A」にも似てるのかな。
何を伝えたかったのか、深淵は図れない。

■交信
当然、はやぶさの事なんでしょうが、思わせぶりなのは何なんでしょう。

と言う訳で、やっぱり短編集よりは長編を読みたい。
ちょうど「ブラック・ベルベット」が新刊にあがっていたので、文庫化の楽しみが一つ増えた。
が、神原シリーズ3作目らしい。「MAZE」は苦手だったので、期待値は下げておこうか。
今度は神原が、烏山響一や、ヨハンと性格の悪さをかけて争って欲しいのだけどな。

(15/06/01)


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