第2回恩田陸祭の第2弾。
ヒロイック・ファンタジーの次はサイコ・スリラーか、と予想していたけど
どちらかと言えばホラー小説か。異星人なら「おしまいの日」とかに近いかもしれないね。
月世界の住人と言えば有名RPG「ファイナル・ファンタジー」を思い出す。そんなのあったよね。
でもタイトルほどには月は前面に出てこない。むしろ水だから「アナザヘブン」か。
「クレオパトラの夢」で函館について大火の歴史を語ったように、
本作では柳川=箭納倉について水郷都市での、ある可能性を語りたかったんだろうか。
世界は一つの意識の集合体。人間は水中に適していながら何かの事情で急激に水中から陸へ生息場所を変えた。
などのテーマは他の作品でもチラリと現れ、恩田陸の底流を為しているテーマなんだろうなと思う。
小林武雄って、その後どうなったんだ?
重要なキャラの様でいて、軽く書かれてしまうのは恩田陸の悪癖なのか。
彼ら4人と小林武雄のタイミングが揃うってのも、何だかご都合主義を感じなくもない。
どうしてあの夜に小林武雄も「あれ」を受け容れる事にしたのか。
それはお得意のシンクロニシティかい?
恩田陸は4人組みが好きだね。
「ネバーランド」「黒と茶の幻想」「MAZE」・・・
今回も三隅親子、多聞、高安と登場人物は限られている。
その限られた4人の家族が死別、離別ありってのも恩田陸のパターン。
この作品の怖さって、実は世界はもうかなり『盗まれて』しまっている可能性があるって想起させるところかな。
高安の手記の形で淡々と書き表される町の静寂さも怖さを煽る。
最後の収拾の付け方は、「麦の海に沈む果実」のヨハンや「黄昏の百合の骨」の梨南子に通じる、
あまり上手とは思えない帳尻合わせ。
改めて読み返してみると、いろんな意味で恩田陸らしさが散りばめられた作品ではある。
不条理さが解決に至らない点で、「MAZE」「劫尽童女」「Q&A」などの系統なんだろう。
私にとっては恩田陸の裏側か。
恋愛小説として味わえば、多聞曰くの「愛される恋愛」か「愛する恋愛」かの議論は興味が尽きないところ。
私は断然後者だな。狩人タイプと自認しております。