死神の精度

伊坂幸太郎・文春文庫

主人公が死神って事で、どうしても「デスノート」と比べたくなってしまう。
死神の世界も、仕事に追われ、縦割り組織に不平を漏らし、なんともサラリーマンっぽい。
語られる幾つかのエピソードは、悠久なる時間のある場面、場面って事で普遍性を描きたかったのだろう。
だけど、2000年前の頃は仕事の合間に楽しみのミュージックを味わうのも大変だったろうね。

■死神の精度
映画化されるのは、主にこのエピソードか。
いくらミュージックが好きだからとて、「見送り」にするほどの“声”だったのか。
ロシア料理屋での若いカップルの会話が後のエピソードに連環する。
また、藤木一恵の歌は老女の若き日の思い出。

■死神と藤田
渋いねぇ、藤田。
TV版「セーラー服と機関銃」を思い出した。

■吹雪に死神
死神の名前が地名である理由は、このエピソードのためだったのでは。
蒲田に千葉に秋田。特に蒲田は名前しか出てこないからね。
権藤さんの死にも、別の死神が介在していたのか。

■恋愛で死神
このエピソードが一番気に入ったかも。
「それ、言っちゃうんですかー」の気持ちはよく分かる。
古川は時を経て、老女として再び彼と邂逅する。

■旅路を死神
いい話。と思ってはいけない。やっぱり森岡の行動は誉められたものではないから。
母親を刺した理由が、電話をかけていたからと言うのは唐突な気がしたけれど、そういう事か。
復路にラーメン屋に寄れたかどうかは定かではないが、甘いテイストが漂うこのエピソードなら、
ラーメンを食べてから8日目が訪れても良いのかもしれない。
とにかく奥入瀬は文句無く、良い所です。

■死神対老女
CDが時代遅れとなった、近未来のエピソード。
死ぬ事より、大事な人に死なれる方が辛い。
晴れた空に、死神と乾杯。

(08/03/29)


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