ドイツイエロー、もしくはある広場の記憶

大崎善生・新潮社

これも「孤独か、それに等しいもの」と併せてタイトルに惹かれて借りて読んだ。
こちらは死ではないけど、失くした恋に向き合い、一応の再スタートをきろうとするきっかけを得るハナシ。
でも、4人の主人公の女性たちは前に進み出せたのかな。後ろの2人は過去に縛られてしまいそうな…
キャトルセプタンブル、海、世界一のグッピーブリーダーのいるユトレヒト、マヨール広場、ハンガリーブルースカイ、
それら全てが“ある広場”って事か。
場の持つ力ってのは確かにあると思う。
私にとっての広場は差し詰め葛西臨海公園・砧公園・井の頭公園・代々木公園ってとこか。
失くしたものって意外と大きいんだよ。

○キャトルセプタンブル
「サヨナラの速度」ってこれまたパクりたいフレーズだよ。
たしかにサヨナラの速度が一致していないと、その速度差で体が引き千切られてしまうんだ。
理沙の母は今何をしているんだろうね。

○容認できない海に、やがて君は沈む
青い血は何のメタファー? 海か。
離別し渡米していた父が、一人娘の独り暮らし先の住所を知ってるのは何故?と聞くのは無粋か。
ここまでの2つは失恋の痛みに負けないでってエールなんだろう。
かれんと、友達と、その彼の3人模様は、やっぱり恩田陸「まひるの月を追いかけて」の妙子、研吾たちを思わせた。

○ドイツイエロー
結婚という幸せを控えた女性の、元彼への申し訳なさ。
これがマリッジブルーってヤツか。
過去との決別、払拭ができたのか。沼袋のグッピーお兄さんに固執してしまうのか。

○いつか、マヨール広場で
『涙は何も解決しないけれど、流すたびに少しずつ自分を変えてゆく』これも良いフレーズだな。
一夜だけの彼をそこまで思い続ける心は純粋で美しいかもしれないけど、
世界を広げにいかなきゃ。世の中の女性が皆、礼子みたいだったら男性は相当大変だぞ。
どうやって魂を揺さぶろうか。

(09/03/29)


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