砂の王国

荻原浩・講談社文庫

ずっと積読になっていた上下巻。ロマサガ2にも飽きてきたので、やっと順番が回ってきた。
自分自身が築いた虚構に飲み込まれてしまう。展開は分かっていたけど、グイグイ引き込まれた。
CX系列のテレビドラマ「ゴーストライター」や、福澤徹三「東京難民」、恩田陸「Q&A」あたりを思い出す。

組織が大きくなるとコントロールするのは容易では無いよね。集団そのものの意志、とでも言うべき大きなうねりに巻き込まれてしまう。
愚かだと見下していたはずが、見限られていたのは自分の方だったという無常観。
自縄自縛の陥穽。
世間への逆襲だったはずが、もはや自分の意図で管理できるスケールを超えてしまった『大地の会』。
教えに従っている訳ではなく、従いたいものを見つけたい。そして盲従したいだけなのだ。
その方が楽だから。

不祥事を起こす大企業のトップも、そんなもどかしさを感じるのだろうか。
そうじゃない、と思っていても
そうは動かないジレンマ。

ちょうどイギリスがEUから離脱するという国民投票の結果が出た日。
アメリカでは異端児トランプが大統領候補にまで登り詰めているし、
この国でもアベノミクスを争点に設定された参院選を迎え、野党共闘との白黒選挙が行われようとしている。
思考停止はもはや害悪だ。
自分の頭で、自分の未来を守るしかない。

(16/06/24)


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