ユージニア

恩田陸・角川文庫

なるほど、これはやっちゃったな。ネットでの賛否両論は読む前から何と無く知っていた。
恩田陸が確信犯的に物語を終結させない事は分かっちゃいるが、これは分からん。
世の中の悪意、人の数だけ真実あり、古い旧家屋への思い入れ、そして作中作。
そんな恩田陸っぽさが存分に散りばめられている事は確か。

恩田陸の作品って怖いよ。そう言う雰囲気を醸し出す事にかけては私は十分に満足している。
読んでる間は楽しいんだが、広げられた世界が広がりっぱなしで理路整然と畳めないのがもどかしい。

ここからはネタバレ御免。
私の解釈としては、実は青の部屋を前に手を引いていたのはキミさん。「母」は母でも実母は別。
私も死ぬべきだったと言うのは不義への自戒が漏れたのでは。
編集者に問合せの電話を入れたのはキミさんで、入れさせたのは隣にいたであろう娘(第四章の語り手)か。
吉永さんの死も謀られたものなのだろうか。
いわゆる真犯人格の彼女は本屋の火事の際も実行犯ではない様だから、
またしても誰かに教唆したって事か。

まぁ、とにかく分からん。得体の知れない不快感だけが心の中に澱の様に溜まっていく。
何一つ解かれない、明かされない、人の数だけ可能性がある、そんな話。


以下は読んでる最中のリアルタイムの感想。

■第一章
独り語りで恐怖を煽る導入部。「Q&A」みたい。
見えるはずのない白い百日紅が見えていた、最後の一人が犯人だ。
これは真相なのかミスリードなのか。
白い百日紅が植えられたのは視力を失った後のはずなのにってか?

■第二章
章毎に語り手を変えるか。「月の裏側」がそんな感じだったな。
14人の語り手が出てくるか。雑賀の目的は彼へのメッセージだったのか?

■第三章
語り手特集は違った。
青澤緋紗子=相澤久代?
雑賀満喜子=マキちゃん?
ああ、これは作中作の「忘れられた祝祭」なのか。

■第四章
また語り手だもの。取材に雑賀一人? ミニカー?

■第五章
どこかにミスリードがあるはず(なんだろう)けど分からない。
あれ? ここではまた青澤なんだ。

■第六章
いやいや、ひょっとしたら取材形式の方が「祝祭」なのか。チェスなのか将棋なのか?

■第七章
いきなり何のハナシ?
脈絡なく視点が第三者に移る。住職の回想による対話はまさに「Q&A」
犯人を外側から見たのか。嫁入り前の妹を失った犯人の返事とは? つまりは怨恨?
まさかそんな単純なわけないよね。

■第八章
やはり緋紗子が真犯人で実行犯を唆したのか。
花の声たる緋紗子への返事が毒の供物だったのか。
これでもシンプルすぎるな。

■第九章
なんだこれ。ミスリード特集?

■第十章
6番たる生き残りの緋紗子に会えなかった?

■第十一章
雑賀の書換は古本屋の所在?
確かに誰かもそれに触れていたが。やはり緋紗子真犯人説が底流に漂うが怖い。
本当に怖いのは不条理が解かれる事無く終わる事。
でも「祝祭」みたいに解無しで終わるって有り得そうで怖い。

ここからはノンストップで読了。

(08/09/07)


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