不安な童話

恩田陸・新潮文庫

ちょっと違った。もっと純ミステリかと思ったけど、少しオカルトの混じった推理小説って感じ。
でもまぁ、こう言うのも有りか。
目次を見た時、タイトルの『海』遊びは「劫尽童女」の『化』遊びを思わずにはいられなかった。
十和田景子の回想の中で「月の裏側」って出てきてビックリ。
そりゃ、特別なフレーズではないかもしれないけどさ。

相変わらず恩田陸っぽいのが幾つか。
万由子ら姉妹は両親と死別。高槻倫子も父親と離別で、残った母とも死別。
今回の四人組は古橋万由子・浦田泰山・高槻秒までは異論が無いだろうけど、残りの一人は?
今泉俊太郎は最後の最後で種明かしに同席してないし、かと言って深井十詩子なのかね。
そこでお姉さん?うーん・・・
『共時性』も気になるテーマなんだろうね。「クレオパトラの夢」でも触れてたもんな。
やたらと出産に関わるエピソードにも触れられてるのが、何かの伏線かと思ったんだけどね。

高槻秒って、この遭遇が無ければどうしたかったんだろう。
独りで遺言を守って、独りで彼らと対峙したのかね。
母の遺作を発表したのは、母に関連しそうな人を呼び寄せるためだったのか。
あの時、ハサミを貸してくれた子に会えるなんて可能性は1%にも満たないだろうに。
ところが、ハサミに反応する子が現れたわけだ。

何度読み返しても、解せない点もある。
倫子が伊東澪子に絵を送るのって、他の3人に比べて軽くないかな。
まぁ、確かに憎んではいたかもしれないけれど、仕事のそれと恋愛のそれは質が違うと思うんだけどね。
澪子はメモを見た事があったなら、絵を見ても驚かないのではないかね。絵を見て思い出したのかな。
英之進の絵が違っていたからと言って、強請れるほどのネタだろうか。
手塚正明にとってメモが残ると拙い理由って何かあるんだろうか。矢作英之進への気遣い?
秒は倫子を葬りたいはずなのに、わざわざ万由子を刺激して記憶を掘り返そうとするのは何故?

×印の伏線はすっかり忘れてたよ。万佐子の伏線も幾つも散りばめてあったね。天晴れ。
推理小説の犯人探しとしては、泰山先生をも疑ったんだけどね。ハズレ。
『海を見ずに終わる者』って誰だったんだろうか。
高槻倫子も、深井十詩子も、「三月は深き紅の淵を」の林祥子みたいな直情型の女性だね。
古橋姉妹もどっちかと言うと勝気だし、メソメソしそうな純情可憐な女の子ってあんまり見ないね。
割と内気なのは「夜のピクニック」の甲田貴子か。
これから読む「木曜組曲」「Q&A」「黄昏の百合の骨」で、そんなタイプの子に出会えるのかな。

(07/04/22)


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