これは良い。
「告白」「夜行観覧車」でミステリの書き手としての才能は疑うべくも無かったが、
伏線の回収が鮮やか。水森さんや滝沢紫織は想像ついたけど、星羅までとは。
恩田陸の「ユージニア」くらい、読んでる最中に何度も何度も、前の章を振り返って
繰り返して読み返した。それでも2周目が楽しく読める。これは凄いぞ。
限られた登場人物の中、少女たちの織り成す人間関係にストンが隠されている。
終章で極め付けのストンに見舞われるのだけど、紫織の悲劇も
己が由紀の購買意欲を煽った事がトリガーになっており皮肉が効いている。
気付いたのは、これは父親の話でもあるんだね。頼りにならない父親像が繰り返される。
お風呂は後に入って欲しい。
洗濯物は一緒に洗ってほしくない。
諦めマン。
痴漢で捕まって、母親を追い込んだ。
女子高生にわいせつ行為を働き、強請に応じずに通報された。
いろんな父親がいました。
*で由紀、**で敦子の視点で描き分けているのだが、
二人とも死にたい絶望を内に抱えながらも、由紀の冷徹さ、敦子の爽快さ、それが良い。
二人で完結しているし、やっぱり紫織の入る余地は無かったのだよ。
由紀は、辻村深月『冷たい校舎の時は止まる』の桐野景子のイメージね。
こう言う硬質的な女の子、嫌いじゃないんだよ。
そして、これは本にまつわる話でもある。『ヨルの綱渡り』と言う私小説が大切な役割を果たすのだが
この辺りは恩田陸の『三月は深き紅の淵を』シリーズだったり、『木曜組曲』などをそこはかとなく想起させるのも嬉しい。
この1冊には私好みの様々なエンターテインメントが詰められている。
2014年早くも一押しの一冊に巡り合ったのかもしれない。