硝子のハンマー

貴志祐介・角川書店

理系ミステリーの典型と言うか。いろいろ細かな設定の整合性はご苦労様って感じなんだけど
物語全体を俯瞰してみると、強引さが鼻につく。
第1章は序盤の秘書チームへのミスリードを皮切りに、あちこち振り回されるあたりはまだ良い。
第2章に入るとご都合主義のオンパレード。

もはや名義を乗っ取るのは目をつぶるとして、
「フリーダム・ハウス」で知り合いになった翠川亜美と何故だか懇意にして、何故だかその子が都合よく輸入睡眠薬を常用してたり。
角砂糖への仕込みも、そんなに器用なんだっけ。
友人の英夫は都合よくラジコン飛行機に凝ってた時期がある。椎名章にはそんな余裕は無かったからね。
便利に使われた上に最後は殺されちゃう英夫。必然性も無いと思うのに。後味の悪さったらない。
それでいて狡猾なはず椎名が、頴原の特徴のある耳を失念したのが命取りと言うのもあっさり軽すぎる。

奮闘するキャラクターたちにも今一つ肩入れできない。
三島沙織がキャラ設定がまた中途半端で。物語にヒロインが必要だと挿入されたのか。まったく必要性を感じない。
ハゲコウと榎本の背景が描かれないので、これまた便利すぎる内通者なハゲコウ。
最後の最後に、犯した罪を償う事の真実を問い質す榎本。あんたが言うか。取って付けた格調も違和感あるんだよね。

介護ザルはどうなるんだ?

(11/10/15)


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