きんぴか

浅田次郎・光文社文庫

三人の小悪党たちをコミカルにこき使い、シニカルに現代を笑う。
まぁ、荒唐無稽な物語と一蹴するも良し。この舞台装置の中でスカッと溜飲を下げるも良し。
浅田次郎を読んだのは初めてだったけれど、「椿山課長〜」も「地下鉄に乗って」も浅田次郎なんだね。
これもその内、映画化されたりして。最近は邦画が金の成る木だからね。

バイプレーヤーも小憎いのが浅田ワールドなのかな。
1巻で大暴れした主人公たちが、2巻で現れる脇役を相手に善い人になってみたり、
3巻にしてセコハンこと瀬古半之助に鼻を明かされる。上には上がいるって事かい。
軍曹の帰郷も馬鹿馬鹿しいけど、妹が良い人なだけにオチはどこか哀しい。
ダメオヤジの岩松や田之倉にも哀しい過去があった。

裏町の喜怒哀楽。大衆小説とはこういう物か。週刊誌に連載され、ストレスの溜まったサラリーマンが己の替わりに快哉を叫ぶ。
適度な暴力とエロ。どっちかと言うと浅田次郎のイメージはそこにしか無かったけれど、哀しい笑いが根底にある事、
そして、それが理解できる様になっている社会の歯車となった自分に気が付かせてくれた1冊。
普通の世の中を生きるのも、実は普通じゃないのかもね。「これ面白いよ」と貸してくれた♀先輩を含めて、
普通のサラリーマン万歳!

(06/12/24)


茶色い本棚(国内作家)へ戻る

私の本棚へ戻る

タイトルへ戻る