きみはいい子

中脇初枝・ポプラ社

返却期限ギリギリに読了。これは良い本だよ。
愛はハッピーエンドだけではないもの。この苦しさ、もどかしさ、その辛さが良い。
家族が故の愛憎半ば。だけど、その濃さこそがやっぱり家族なのかな。

●サンタさんの来ない家
先生からの視点で、3年B組金八先生みたい。
学級崩壊に悩む新任の岡野先生には帰れる家族がいて良かった。
ハグの宿題じゃないけど、やはり愛情に包まれるかどうか、大事なんだね。
ただ甘やかすだけではなく。
子供にだって響く言霊もあれば、上滑りするだけの言葉もある。
この連作短編集は、相互にカメオ出演するキャラクターがいるんだけど
「こんにちは、さようなら」で主役を張る櫻井くんがカメオ出演。

●べっぴんさん
これがリアルかも。
虐待は繰り返しちゃうって言うよね。親にやられた事を、子供にしてしまう。
どこかで断ち切らねばならぬ負のスパイラル。
こうやママの仮面が外れた瞬間の空気とか、世間体を気にしての叱りとか。
子ども側からすれば、他の誰かがいれば怒られないだろうと言う計算。あるよね。
考えてみれば、その計算が初めての策謀なのかも。
救ってくれる、気づいてくれる、誰か居てくれる幸せ。
親にとっても子供にとっても。
この章はカメオに気付かなかったけど、どこかにいたのかな?

●うそつき
必ず勝てるじゃんけん。その理由とは。
そして、消防団でラッキーを飼っている菊地さんと言えば…。
これは先に読んだ「わたしをみつけて」の菊地さんがカメオ出演か。こういうの好きだよ。
一話目が先生、二話目は親コミュニティー、三話目は他人の子。
菊地さんのエピソードも隣家のお腹の子がカギ?
無垢な優しさと、よりどころになる記憶。悲しさとホンワカの半分こ。ハーフ&ハーフ。
「サンタさんの来ない家」の主人公である岡野先生がカメオ。

●こんにちは、さようなら
急に視点が変わる。
幽霊なのかと思ったよ。
独りって、こういう事なんだろう。辛いね。
生まれてきた以上、必ずスタートには誰にでも家族がいるはずなのにね。
この物語は、ラストのこの先まで考えると更に辛いね。
居場所って欲しいね。家があるだけ、まだマシって話しもあるけど、衣食住だけじゃ辛いね。

●うばすて山
「うそつき」の主人公の子供時代、もっちゃんとたっくんがカメオ。
親から子への虐待のなれの果て。惚けちゃうって、もう敵無しだよね。
理屈じゃ勝ち目ないんだもの。それでも、幾つになっても上位自我として
君臨して縛り付けられてしまう。
天童荒太「永遠の仔」にもそう言うのあったし
樋口了一が「手紙」を歌ったのは何年前になるかな。
自分も赤ちゃんとして傍若無人に振る舞ったんだ。
それを無償の愛で包むのか、行き過ぎた感情が虐待に至るのか。
実はほんの僅かな些細な違いなのかも。虐待も放置よりはマシなんだろうか。

著者の本、ここまで2冊読んで、中脇初枝2連勝かな。
今年はもう少し中脇初枝を読んでみよう。

(14/01/08)


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