処女作「虐殺器官」では書ききれなかったんだなぁ、と言う印象。
文中には、ある仕掛けが施されているのだが、もはやテキスト系HPをバリバリやってるのは奇特な人くらいでしょう。
私は何となく分かったけどね。
「虐殺器官」と地続きの世界として、<大災禍>はクラヴィスの起こしたアメリカ内戦に端を発したと読めないか。
人類は更に一歩進んで、病気で死ぬことの無い世界を築き上げた。
そんな天国のように思える世界で、3人の少女の感じた厭世観が主軸。
御冷ミァハ、霧慧トァン、零下堂キアンという命名の由来は何だろう。かなり凝ってるよね。近未来設定だから?
死んだと思った彼女が実は生きていました、と言うのはミステリなりヒロイックファンタジーの常套手段。
本作も例に漏れず。さぁ、最後まで生き残るのは誰だ?
争いの無い、完全なる一つになった世界。対立がなくなり、対話の必要すらなくなり、人々から意識が不要となる。
そんな世界は見たくはない。しかし自分の生きる世界に争いは怒って欲しくない。このジレンマたるや・・・。
争いは対岸の火事では無いんだという、「虐殺器官」とやはりセットで読むべき1冊だろう。
早逝していなければ、この著者の頭の中からもっとたくさんの未来像が提起されたのかと思うと、残念でならない。