劫尽童女

恩田陸・光文社文庫

光文社の恩田陸は初めて。ブックカバーの裏表紙のあらすじを見る限りでは年端の行かない子供の仇討ちモノ。
なるほどヒロイック・ファンタジーか。確かに第2部まで読み終えたところでは、「セーラー服と機関銃」かってくらい
コテコテな感じで面白かった。正直言って、同時に購入した「月の裏側」「不安な童話」「木曜組曲」の中で
一番期待はしていなかったんだ。でも、「禁じられた楽園」よりも「ハイダウェイ」みたいな展開でストンと惹きこまれた。

しかし最後が拍子抜け。

私が勝手に恩田陸の底流と思い込んでいる『家族』は、やはり本作でも歪な形で示される。
生の在り方を問おうと言う試みだとすれば、私の中ではそのテーマは「ジュラシック・パーク」を超えるものは無いね。
ジェンダーについての主張だとすれば、「MAZE」「クレオパトラの夢」シリーズに通ずる主張があるのかな。

ヒロイック・ファンタジーに徹して読むならば、田中芳樹の「冬の魔術」シリーズに近いものを感じる。
ハナコ・エミー・ウエハラが慣れない慣用句(これって変だね)を使ってみせるのは、「創竜伝」のクラークか。
特に第3部の書き出しなんて、いかにも田中芳樹っぽい。第4部の時系列行ったり来たりはザ・恩田陸だけど。

カンボジア=地雷のイメージは持てた。
「図書室の海」の中のイサオ・オサリヴァンみたいに、遥は極楽鳥を探しに行ってしまった。
「ネバーランド」の義国が嫌う、大団円のファンタジーでは終わらなかった。

『ZOO』はアメリカの秘密組織・研究機関なんだろうね。ただ長野を訪れた『ハンドラー』は日本人の様に思えるけど、
或いは日系人って事か。『BUG』は潜入スパイみたいなものだね。
最後まで舞台装置を全て明かさない手法は「エヴァンゲリオン」みたいな感じもするね。

(07/03/30)


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