誕生日を知らない女の子

黒川祥子・集英社文庫

久しぶりの読書。二泊三日で集中的に読了。
黒川祥子は「後妻業」も積読に残っていたのだが、まずはこちらから。「後妻業」は黒川博行でした。
ルポとは知らなかったな。

副題の〜虐待−その後の子供たち〜にある通り、虐待を受けた子供たちに焦点を当てた作品。
ニュースに報じられるのは、非業の虐待死してしまった子供たち。
しかし、虐待死こそしなかったけれど、「殺されずにすんで」児童相談所によって保護された子供たちは一件落着なのか?
という観点でまとめられた作品。確かにそんなこと考えた事なかったよね。
虐待の果てに母親を殺してしまった青年の裁判での発言、「虐待死させられた子供の方がずっと羨ましい」というのは何て痛ましいんだろう。

奇しくも今日は衆議院選挙の投票日。幼児教育の無償化!なんて声高に喧伝している政治家の皆さん。
養護施設への税負担も、もっともっと目を向けて良いのでは?

現場の皆さんも、経験が無いとなかなか受け入れられるものではないのだろう。
きれいごとでは済まない。頭では分かっていても、接しているうちに感情的になることだってあるだろう。
この作品で紹介されたケースは、本当にある一部分でしかないのだろう。
声を挙げられない虐待被害者はたくさんいるだろうし、そんな子がいずれ大人になって自分の子供ができた時
優しく育てるという経験がないので、結局は同じような子育てをしてしまう、という負のスパイラルが哀しい。
実は虐待をしている親にも、救いの手が必要なのだ。
決して他人事ではなく、周囲の人や取り巻く社会が救いの手を差し伸べてあげないと、
孤独の中でどんどんと復讐の怨嗟は色濃く渦巻いてしまう。
果たしてそれが自分にもできるのだろうか。

この作品で取り上げられているようなファミリーホームを、もっともっと身近なものにできるように
やはり代議士の皆さんや、発信力のある人が、もっともっと声をあげるべきだと思う。

親の、我が子への無償の愛、は実は逆。子供の親への愛こそが無償なのだ、というメッセージは重い。

(17/10/22)


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