インタビュー・イン・セル 殺人鬼フジコの真実

真梨幸子・徳間文庫

帯に『ラストまでに、「彼女」はあなたを三度欺く。』とあったけど、確かに怒涛のストンで落ちた。
これは鈴木光司の「リング」と「らせん」のようだね。前作を読み返さずにはいられない。
すぐに手に取ったけど、やっぱり幾つか気になる点はある。
下田健太が2作目であれだけの役割を果たすのが分かっていたなら、
1作目でもっと伏線があって然るべきと思うのだが。健太の幼少期が描かれてないのは不満。

一番気になるのはみっちゃん。
ミスリードは、まぁ良い。でもB子の証言含めて“女の子”という説明は苦しくないか。
本来は早季子の死を告発すべく赴いた美也子が、健太に監禁されてからは
茂子よりも健太を告発しようとしたのは已む無きか。
元々Gテレビに匿われていたんだから、殊更サツキへのアプローチを深読みするのは井崎の陰謀史観というものでは。

土屋雅美などが今でも健太を思慕するのは恋愛感情からだとして、
小坂初代が健太を庇う言動の理由は分からない。
茂子の支配下にあると言う事なんだろうか。小坂家も2冊通じて重要な役割を果たす鍵になっている。

限定版の「私は、フジコ」にも登場するキーパーソンである吉永サツキ。
彼女の執念は、その詳細は明かされていない美也子の編集担当だったと言う兄が一枚噛んでいるのだろう。
てっきり消されたジャーナリストが兄かと思ったけど、美也子の担当者を務める以上はもっと最近まで生きてなければ辻褄が合わない。
復讐と言う動機が無ければ、サツキの下田茂子・健太親子に対するモチベーションは説明がつかない。
サツキはフジコによる被害者を15人ではなく18人と+3人カウントしており、それが兄たちなのか。

後味も悪く、全ての謎は解決せずに(たとえばハヤシダが瀬川満知子かは明かされないまま)
読後感はスッキリしないんだけど、恩田陸よりは話がまとまっているとは思う。
でもしばらくは良いかな。中脇初枝の方がホッコリするよ。

(14/1/13)


茶色い本棚(国内作家)へ戻る

私の本棚へ戻る

タイトルへ戻る