相変わらず軽快なテンポでサクサクと読める。
恩田陸のような仕掛けは無くともエンターテインメントとして秀逸。
しかし、石田衣良も次から次へとよくもまぁ、こんなに書けるものだね。
そして普通の日常と思っている世界に、こんなにも問題は潜んでいる訳だ。
やっぱり小泉さんの規制緩和、新自由主義が格差社会を生んだのかね。
大学で政治学を学んでいた時に、教授から読まされたのはJ.ロールズの「正義論」だった。
自分自身の明日がどうなるか分からない「無知のベール」に包まれたとき、
人は利己的なばかりではなくセーフティネットの重要さを認める。
思い出したのは、そんな話だけど。
正直、私だって涙腺にぐっと感じるものがありつつ、登場するキャラクターたちの生活は
ページの向こう側の世界でしかない。私の世界はもっと平凡であり安逸である。
作中でマコトが言うように、涙ではなく、怒りをもって読まなければならないのかもね。