七月に流れる花

恩田陸・講談社タイガ

恩田陸すら積読に回ってしまうほど、育児中の自由時間の確保は難しい。
越年で、確定申告の待ち時間に選んだのがこの1冊。
それにしても講談社文庫ではなくセカンドラインナップのような講談社タイガでの文庫化にやや面喰う。
薄いしね。
以下、ネタばれ覚悟で読書時系列の感想をつらつらと。

謎の「みどりおー」・・と言い淀むくらいなんだから、素直にみどりおとこ、ではないのだろう。
やっぱり女ということか。 (→ハズレ)
「夏の人」として写生のモデルになるくらいだから、否定された存在ではないのだな。
資産家だが精神を病んで徘徊している、名士の係累とか? (→ハズレ)
少なくともミチル目線では、その後の時間軸から振り返っているので死にはしない。
佐藤蘇芳は死亡フラグありあり。『蛇行する川のほとり』パターンなら可憐に散るな。 (→ハズレ)
『雪月花黙示録』の蘇芳とは同名の別キャラであって、カメオでは無いのね。

女子版『ネバーランド』と言うには不穏な空気はある。『木曜組曲』も女子だらけだったな。
ときたら、土塀の向こうの声は、男?

ご都合主義が垣間見えたのは、いなくなった亜季代のことを、どうやって学校へ連絡できた?
携帯電話がある世界観でもないが、ラジオが入らないくらい電波状態も悪いのだろ。

読み終えて。
ふむ、やはり解かれた謎、解かれない謎、あるよね。
最大の謎は土塀の向こうの男の子の声。「ひどいことをされる?」
それが最後の1行に集約され、次の作品で種明かしなのか。
それほど死ななかったけど、亜季代は途中でリタイアしている。
だが、ダークファンタジーと言うほどでもない。
とても消化不良。

テイストは悪くないのよ。不穏な世界観は楽しめるの。
読み始めて8割くらいまでのところは良いのだが、ストンと解決しないんだな。
今回で言えば、夏のお城がシェルターになっているという、そのリアリティ。
科学特捜隊の秘密基地じゃないんだからさ。舞台装置が強引すぎるから付いていけない。
緑色感冒というのも決して一般的な病気ではなく、強引な設定な訳でしょ。
季節外れの転校生、というのも理瀬っぽくて良かったけど、この設定なら緑色感冒に侵された患者の家族は
ミチルと似た様に夏流へ転居してくるので、ミチルと似た様に緑男を描き違えた子はいるだろう。
佐藤蘇芳が大木ミチルの母に口止めを約束する必要性も薄いし。そこは前振りも無いのでストンと落ちられないのだよ。

まぁ、ここまで書いといて次の『八月は冷たい城』でストンが待ってるなら拍手喝采です。

(19/03/07)


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