Junk

三羽省吾・双葉文庫

ある図書館では本の福袋ってやってるんだって。
偶然の出逢いと言うものは本にもある。無数の刊行されている本の中からの巡り合いは奇跡。
私の場合は先輩からのお下がり。この著者は初読み。
帯にも書かれていた「関係性小説」なる世界観。悪くない。

毒にもなれない裏通りの小悪党
という副題が、物語っている通り小悪党たちなんだが、彼らたちにも矜持はある。
憎めないキャラクターたちのコミュニケーションがくすぐったくもあるが、良いんだな。
人とちゃんと会話する、要は喋れよ、と言ってみたり
他人と深くかかわると碌なことがない、と言ってみたり
直球ばかりではないが、誰ひとり孤独ではいられないってことだ。

ボーヤを心配するネーチャンだったり、
タクミとアキのハラハラするような同棲生活だったり、
梅田家の男三代のもどかしい愛憎だったり、
泰江、是枝、キムのライバル心だったり、
サクラと小悪党同士の駆け引きだったり。
前田信二郎や、真弓子のその後なんかは気になるけど、
きっとこの世界の中では、誰かと何かをしているのだろう。

一つだけ、気になったのは
喜八もすり師だった、と言う点はどこに書かれていたか分からなかった。

新春早々に面白い1冊に巡り合えて良かった。

(15/01/07)


茶色い本棚(国内作家)へ戻る

私の本棚へ戻る

タイトルへ戻る