球体の蛇

道尾秀介・角川書店

思い込みの錯誤。この連続でコインの裏表がクルクル変わる。
これが道尾ワールドか。「シャドウ」や「ラットマン」もそうだったか。

第2章までで、乙太郎さん家族と、智子がのっぴきならない宿命(?)縁で繋がってる事が明らかになる。
サヨを殺したのは友彦自身の傲岸不遜な態度だと思っていたが、智子の投げ捨てたタバコに起因したとは!
しかし、初恋のサヨの死因を生んだ智子に、己の放火疑惑を身を呈して守られていたなんて!

当然また一捻りくらい残ってるんだろう。となると綿貫邸放火の真犯人はナオしか残らないのだよ。
で、ラスト。
まぁ、鍵を握ったのはナオだった。

1)ナオが智子の自殺を語る
2)友彦はサヨの死の責任を負わせて智子を責めたからだと悔悟
3)友彦はサヨの自殺の原因は己の傲岸不遜にありと告白
4)しかしナオはキャンプの失火はサヨの仕業と告げる
5)友彦は無実の智子に罪を押し付けたと悔悟

しかし、智子が生きていたとすれば、ナオの遠謀深慮。
乙太郎と智子の関係も快く思ってなかったナオは、友彦の心からも完全に智子を葬ろうとし、智子が死んだ事にした。
しかしそれは友彦にとっては、無実の智子への贖罪の感情も産む事にもなってしまった。
ナオが告げた通りキャンプの失火が本当にサヨなら。
どちらもナオのフェイクだったならば、1勝1分けってとこか?
女は怖い。このハナシって、実はナオが周到に友彦を絡め取ったと言う物語なのかな。
友彦が町を出てからの展開は、やや端折り過ぎなきらいはあるが。

ラストの智子は見間違いの人違いが妥当では?
智子の死がフェイクかもしれないと言うきっかけが無いと、真相推理に辿り着かないから已む無しだが、やや蛇足気味。

そして綿貫邸の火事は単なる失火ですか…?
謎は残されたまま。

(10/09/23)


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