青春夜明け前

重松清・講談社文庫

うん、これは正しい。
青春と呼ぶにはまだ幼すぎる中学、高校の男子生徒目線としては、うなずけるものばかり。
この物語に描かれてるおバカなガキんちょ達が微笑ましい。

特に地方の片田舎の中学、高校生たちなんて、頭の中は単純至極。
私も埼玉のごく限られた通学エリアの中だけで完結していた中・高の6年間だったな。
特に高校は男子校だったし。
石田衣良「IWGP」シリーズに出てくるような、都会の華やいだ生徒たちとはえらい違いだよ。

中学、高校の頃にほとんどの時間を一緒に過ごした仲間たちも、年を経るにつれ
次第に没交渉となり、連絡を取り合える友は減ってくるもの。私も然り。
それでも、幾人か友誼の続いている友がいる。本当に、嬉しいことだし、ありがたいことだ。
共に振り返る事のできる友がいると言うのは素晴らしい。たとえ振り返る思い出自体がちっぽけだとしても。
輝きは色あせないし、むしろ思い出は美化されて当時の事実以上の価値を生んでしまっているかもしれない。
虚構だとしても、それによって生きられるならそれで良いじゃないか。

大学時代、社会人時代、年と共に、また懐具合と共に、出来る事も増えてきて
謳歌した青春時代も大切な人生の一ページであるけれど、まさに青春夜明け前の
ちょっと酸っぱくなる様な思い出を振り返る事のできた良い1冊だった。
この巡り合いが、38歳の誕生日プレゼントだと思って感謝しよう。

(13/07/18)


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