東京騎士団

大沢在昌・光文社

これがハードボイルドと言うものなら、今後一切この手のジャンルは読む事はないでしょう。

ハードボイルドは映画に限るね。ドンパチが派手でさ、見る分には良いんじゃない?
ディテールに凝っている割りに、肝心な所が抜けるからリアリティも無いし、共感も生まないんだな。

ネタバレになるけど、主人公は仲間のプロゴルファーと、その恋人の復讐と言う事で
言わば敵となる軍団の所属メンバーを殺しまくっている訳ですよね。
それでいながら、敵の総帥がまだ年若いからと言って、拍子抜けして許しちゃうってのが軽すぎる。
じゃぁ、そこまでに命を落とした友人、殺しまくったメンバーの命って何?

幼馴染が、実はメンバーに属していたと言う展開は陳腐ながらも、多少衝撃を与えてはくれましたよ。
葛藤の末、幼馴染は主人公と共に敵の軍団の本部に乗り込むんですが、その際に流れ弾に当って
結果的に幼馴染は命を落とし、主人公の悔悟の念が増すのも軽い。
いかにも映画的。ラスト20分前くらいに「俺のことは良いから行け」とか行って死ぬのね。

それから、まだあるよ。
この手の展開に、黒幕となる大物が必要なのは仕方ない。何故だかビッグな老人と伝手があるのも常套。
更に言えば、何故かと思えば実は血が繋がってましたも良いでしょう。ご都合主義だ。
でも、別に無理矢理ヒロインを仕立てて、実は兄妹でしたってのは、まったく蛇足。
だって、何にもストーリーに関係無いし、別に奥行きも与えてないと思うよ。 これは思うに雑誌の連載だったのでは?
第1話でヒロインっぽい記載がしたかっただけなんじゃないの?

挙句の果てに、敵の総帥を見逃してとにかく妹と早く会いたいってのが軽すぎ。
これは違うでしょ。命を落とした仲間を弔いたいと来てこそハードボイルド。
戦闘シーンの中に遺体を放置せざるを得ず、骸を晒した女医さんの供養はしないんかい?

など、ツッコミどころ多数。
主人公の会社は、もう敢えて触れません。
武器の調達も、まぁ良いでしょう。
今後の主人公についても考えるのは野暮ってもんですね。
やっぱりハードボイルドはドンパチをハラハラドキドキ見守る映画鑑賞が良く似合う。

(03/12/21)


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