おしまいの日

新井素子・新潮文庫

これも、NHK-FMのラジオドラマ「青春アドベンチャー」でやってたのを聞いて、
それから原作を読みました。結構手の混んだ事やってますよね。一面塗りつぶしたりとかね。

これは結構恐い話です。恋愛も形がいろいろありますが、行き過ぎると悲劇を生むんですね。
やっぱり「待たれる」と言うことは、嬉しい事でもありますが、やはり度が過ぎると
プレッシャーにしかならないのでしょうね。それは分かる気もする。
三津子は春さんを愛したくて、でも側にいないから、『にゃおん』を創造してまで
擬似恋愛モードに突入して、それを日記の世界で完結させてしまったのでしょう。

久美もまた被害者の一人なのだろうか。ふとした再会が彼女を「おしまいの日」に
関わらせる事になったのだが、彼女には俊幸がいるからね。
三津子と春さんの間は何が問題だったんでしょうかねぇ? これ読んでても
悩みますよ。何が悪かったのかって。こんなことが実際にあっても解決する方法が
ないような気がします。失ってみて解るんだけど、かと言ってどうしようもないという・・・

三津子の精神的な失調は、にゃおんを失った後にUFOまでその世界に登場させ
終焉の日を迎える事になります。愛したいという、そのひたすらな心を孤独が蝕み、
その空白を埋めるのは狂気的な想像力でした。

その一方で、現実的な認識から妊娠した彼女は、愛する春さんの敵となる前に
お腹の子どもとともに失踪する訳ですが・・・

裏表紙に書いてあるとおり「日常生活に潜む正気と狂気の狭間を描くサイコ・ホラー」
です。ストーリーは精神的崩壊の一途ですもの。でも、特別暗いって訳でもないし
われわれがこういう状況に陥らないという保障はないですよ。

愛っていったい何なんでしょうね。

(97/11/3)


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