デビュー作という「最後の息子」ほか3編の短編集。電車の中で読むにはちょうど良い。
全ての舞台は長崎。作者の出身地だから、リアリティ満点なのかな。
必ず一人は死者がいて、物語は全体的にうっすらと追悼の印象がある。
主人公は他人を救おうと背伸びするのだが、その思いは伝わらない。
俺なら世界を変えられるという思い込み。
素直じゃない愛の形。
「きれぎれ」に世界観が似てる気がする。
痛々しいくらいに、こっぱずかしいくらいに、内面を曝け出す。
臆面もなく自分に向き合う、自虐的なナルシストたちの世界。
圭一郎がジャン・コクトーを引き合いに出すのは品格か。大衆文学とは一味違うぞと言う主張か。
空手の「形」みたいに一定の様式美が粋なのか。
これが純文学ってヤツか。
少なくとも、帯にある様な『爽快感200%』の物語とは到底思えなかった。
でも嫌いじゃないけど。吉田修一は合うんだな。