手紙

東野圭吾・文春文庫

1年くらい前に借りて読んだ事があったのだけど、この度TBSで映画を見たので
当時書きかけだった感想に手を入れて更新してみる事に。

当時『うつくしい子ども』『繋がれた明日』そして『手紙』と立続けに身内犯罪小説とも呼ぶべきジャンルを読んだ。
これがジャンルとして成り立つってのは、この手のテーマが他人事じゃないってことなんだろうね。
『うつくしい子ども』では加害者の兄が、メディアから奇異の目で追われる。
『繋がれた明日』では保護観察で出所した加害者自身が、世間から厳しい視線を浴びせられる。
そして『手紙』では加害者の肉親が、事あるごとにその背景を詮索されて進路の変節を余儀なくされる。

『うつくしい子ども』では最後に主人公である兄が、罪を犯した弟に対して
「一度だけの面接で、弟を海に投げ捨てるわけにはいかなかった。」とあるんだけど、
やっぱり彼も、この後の人生を耐えに耐え、それでも耐え切れず絶縁する日が来るんだろうか。

『繋がれた明日』でも受刑者である主人公の妹は、恋人と別れることになる。
『手紙』の中でも主人公は学生時代の恋人との恋愛にピリオドを打つばかりか、
その恋愛自体を秘するように依頼を受ける。
やっぱり悲恋だなと思っても、我が事であれば、やはり已む無しとも思うよね。
みんなが由美子の様なキャラにはなれないよ。

事実からは逃げられない。逃げ切ろうとするよりも、それを受け容れること。
その難しさ、辛さ、痛み、そうしたものから無縁でいたいと思うけれど、
望むと望まざるとに関わらず、意外に近いところに不幸は転がっているのだろう。
そして不幸を連鎖させるのも、させないのも、己次第か。

(07/12/24)


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