私の命はあなたの命より軽い

近藤史恵・講談社文庫

薄かったし、割とサクッと読了。もうちょっとドロドロした話かと思ったんだけどね。
強いて言えば思わせぶりなラスト。でもそれ以外はストレートな一本道。
平原の態度も、彼女の弟のエピソードも、回収されるべきフラグは収拾。
恩田陸の投げっぱなしに慣れてきたからか、素直な展開では拍子抜けしてしまう。
命の軽重は対面や法律で測れるものでは無い、というテーマそのものは納得も行くけれど
あまり奥行きは感じないかな。

愛情は質量の重い一方向のベクトル。好意的に受け止められるうちは良いが、すれ違うと苦しい。
遼子の旦那への愛。妹への愛。
克哉の妻への愛。美和への愛?
両親の美和への愛憎。
宏大と美和の愛。父の逆鱗から、宏大の死。
美和とみのりの友情から、みのりを見殺しにした美和の葛藤。
平原弟の失意と、平原姉の怨嗟。
各地の産科医の遼子への思いも、仕事上とは言え慈愛かもしれない。
世の中には様々な愛の形があり、残念ながらそれらがすべて結実する訳でもない。

(17/10/28)


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