リング

鈴木光司・角川ホラー文庫

いよいよ映画化される事になったこの作品。
単なるホラー文学では無いと思います。

初めて読んだ頃は、他に「ホット・ゾーン」とかを読んでいて
ちょうどエボラ・ウイルスが世の問題になっていた頃だと思います。
映画でも「アウトブレイク」とかやってたり。
そういう事実としての怖さ、に敏感だった時期にこの作品に出会いました。

ところが、「リング」は確かに恐いのですが、読めば読むほど
オカルト、SF的になっていくのがちょっと肯けませんでした。
1本のビデオテープがもたらす謎の死。1週間後に迫った死を避けるために
浅川と高山は必死に「オマジナイ」を探す訳ですが、
ビデオテープが念写(念像)によって作られた、とか
怨念が残る条件、とか荒唐無稽なストーリー展開に少し疲れました。
その一方では、ウイルスに関する医学的・生物学的知識を
ちりばめてあったりするんですよね。
妙に現実的だったり、妙に非現実的だったり、それが
ホラー文学なのかもしれないんですけどね。

結局、遺骨を解放する事で怨念から逃れ、ビデオテープのもたらす死から
開放されたかに思われたが、竜司の死によって振り出しにもどってしまい
焦る浅川。そして出した答えが「増殖」。
最後は生物学的知識が解答を導いた訳です。
導いたはずでした。
しかし・・・

この作品は単体としてはさほど評価出来ませんでした。
次作の「らせん」を読んだ時に一転。
作者の壮大なスケールの前に脱帽です。

(97/12/9)


茶色い本棚(国内作家)へ戻る

私の本棚へ戻る

タイトルへ戻る